性別や年齢等に関係なく誰もが楽しめ、高みを目指せる競技として今大きな注目を浴びているeスポーツ。
先日、東京ビッグサイトで開催された世界規模の格闘ゲーム大会「EVO JAPAN2023」は、さながら格闘ゲーム界のオリンピックと言っても差支えの無い大盛況。老若男女のプレイヤーが世界の頂点を目指し競い合ったが、中でもひと際目立つ選手がいた。
「ストリートファイター5」の試合会場でカスタムされた車椅子に座り、通常のコントローラーやアケコンでは無く、何やら顎でレバーを操作している…少し不思議な光景だ。
彼はjeni選手こと、畠山駿也さん(@jenixo0)。次第に筋力が低下する指定難病、筋ジストロフィー症を抱えており、通常のパッドだと操作が上手くできないため、顎で動かせる十字キーを開発して僅かな力でも操作できる特製コントローラーを製作。世界の大舞台で闘っている。
熱戦を終えた畠山さんにお話を聞いた。
橋本:まずは「EVO JAPAN」お疲れ様でした!結果や参加した感想をお聞かせください!
畠山:ありがとうございます。格闘ゲームのオフライン大会に出場するのは今回が初めてで、「EVO JAPAN」という世界的な大会に参加することが出来たことが何より嬉しかったです。
結果は2戦2敗と厳しい内容でした。ラウンドを取ることもありましたが、単純なコンボミスが多く満足の行く試合内容が出来なかった事は心残りですね。
持ち運びができる構造のコントローラー製作に思った以上の時間がかかってしまい練習時間があまり取れなかったので、次はもっと精度を上げて万全な状態で大会に出場したいと思います。
橋本:既に次の闘いを見据えているのですね!専用コントローラーは慣れるまでは相当練習が必要だったのでしょうか?
畠山:最初は純正のパッドをスマホアームスタンドに養生テープでぐるぐる巻にするところからスタートしました。スティックを顎で操作する度にコントローラーが揺れるので、最初は複雑なコマンドが出せなかったり顎が擦れてニキビが出来たりと大変でした。
エドというコマンド技が無いキャラクターがいたおかげもあり、操作の難しさを感じることは自然となくなりましたね。
橋本:試行錯誤を繰り返した努力の結果が今の強さなんですね。所属する株式会社ePARAは障害者支援を行う団体との事ですが、どの様な活動を行っているのですか?
畠山:株式会社ePARAではeスポーツを通じて、障害者が自分らしく、やりがいをもって社会参加するための支援事業を行っています。支援活動の一環として、バリアフリーeスポーツに関するニュースの取り扱いや、バリアフリーeスポーツ大会の企画運営に取り組んでいます。
視覚情報を一切使用せずに音声だけで状況を判断して戦うeスポーツ大会の「心眼CUP powered by SYCOM【ストリートファイターV チャンピオンエディション】」を昨年開催したり、様々なバリアフリーeスポーツ企画を行っています。
橋本:全盲の人と同じフィールドで闘う大会ですか。様々な人に理解が得られるかも知れない画期的な大会ですね!今後としてはどの様な活動を行う予定ですか?
畠山:プレイヤーとして今後のオフライン大会参加に関する予定はまだありませんが、「ストリートファイター6」は格闘ゲームに没頭していた10代の頃以上に向き合う気持ちでいます。
また、今年の9月にePARA史上最大のバリアフリーeスポーツイベントを現在計画しており、総合プロデューサーとして現在イベントの準備を進めています。内容は格闘ゲームのオフライン対戦交流イベントになる予定です。詳しい情報解禁まで期待してお待ちいただけたら幸いです。
橋本:最後に、様々な境遇で「闘う」方々にメッセージをお願いします。
畠山:一人ではどうしようもない問題に直面し、工夫がわからずに諦めてしまう経験は誰しもあると思います。好きなものと向き合い続けることは、とても幸せである一方、一生続く自分との闘いのようなものです。
それでも私が闘い続けられているのは、工夫次第で遊びに限界はないことを格闘ゲームに教わったからです。この記事を読んでくださったあなたと、この先に対戦できる日が来ることを楽しみにしています。ありがとうございました。
◇ ◇
畠山さんは自らのnoteでも、病気やゲームに関する熱い想いを語っている。ご興味ある方は是非そちらも一読してもらいたい。
自らの病気と闘いながらも「好き」を貫き通し、今も世界を相手に闘う畠山さん。格闘ゲームの中では、彼も我々と何も変わらない、一人の挑戦者。もし画面の向こうで彼と出会う事があれば、全力で拳を交えたいものだ。
畠山駿也さん関連情報
ePARA:https://epara.jp/