NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は、将軍・源頼朝の死によって、壮大な序章が終結した。次回からは、頼朝の後継となった源頼家を支える有力御家人13人の権力をめぐる争いが熾烈化していく。主人公・北条義時が修羅場をどのように乗り越えていくかも注目されるが、義時の姉で頼朝の妻・北条政子にも要注目だ。
次回(第27回)「鎌倉殿と十三人」の予告動画が既に公開されているが、そこには政子が出家し、尼となった姿が一瞬だが写されていた。政子は女優の小池栄子さんが演じているが、その姿を見て「政子様の尼姿が美しすぎ」「尼将軍になっていく過程が楽しみ」との声もネットで聞かれた。
多くの人の政子のイメージとしては、幕府を倒そうとする後鳥羽上皇方との戦い「承久の乱」(1221年)の時に、御家人たちに、頼朝の深い恩を説き、加勢と奮起を促した「演説」が強いと思われる。歴史教科書においても、政子の演説する姿が描かれていたものも、かつてあったように思う。
しかし、鎌倉時代後期の歴史書『吾妻鏡』(1221年5月19日条)によると、政子自身は演説していない。頼朝の「恩は山より高く、海より深い」という有名な言葉は、安達景盛が代読しているのだ。それでも、御家人たちは、感激し涙を流し、官軍ではなく、幕府に味方する事を誓うのである。
ドラマにおいて、この場面はどのように描かれるのか。正攻法で政子が熱弁を振るう様が映し出されるのか。安達景盛が政子の言葉を代読するのか。それとも、脚本家・三谷幸喜さんのことだから、奇抜でユニークな描写とするのか。今から楽しみである。
承久の乱までにも、政子の苦難は数多あった。度重なる娘の死、嫡男・頼家の追放と死、父・北条時政の追放、次男で三代将軍・実朝の暗殺。これほどの悲劇を体験する事があるだろうかと思われるほどだ。
ドラマにおいては、政子と妹・実衣(阿波局)との確執が深まっていたが、二人の姉妹の今後の関係も気になるところ。実衣の夫・阿野全成にも悲劇がふりかかるのだが、それが二人の姉妹に更なる亀裂をもたらす事になるのか否か。三谷脚本は、時に「史実」を軽々と飛び越え、視聴者を「新世界」へと誘ってくれるので、たとえ「史実」を知っていたとしても、ワクワクドキドキして観る事ができよう。
政子が苦難を経るごとにどのように変化していくのか。義時の活躍とともに、そちらにも要注目である。