〝宇宙版人狼〟「Among Us」や〝稲を育てるアクションRPG 〟「天穂のサクナヒメ」など個性的な作品が流行し、少人数で製作されるインディーゲームが注目を集めている。インディーゲームインキュベーションプログラム「iGi indie Game incubator」の運営メンバーで株式会社ヘッドハイ代表の一條貴彰氏はインディーゲーム制作を「漫画家さんに近いスタイル」と形容する。
インディーゲームとはIndependent gameの略で、大手のゲーム会社に属さず”独立”した状態で作られたゲームのこと。大手ゲーム会社では数百人単位でゲームを作るのに対し、一人もしくは数人のチームで開発から販売までを手がけるのが基本的なスタイルだ。 大手のゲームよりも作家性が重視され、「〝この人〟にしか作れないお話、ビジュアル、ゲームの遊び方」が求められるという。
個人でゲームを製作する文化は1980年~90年代頃からあったが、「ここ2~3年でインディーゲーム作りに挑戦する方、参加する方が非常に増えている」という。一條氏は三つの要因があると分析する。
一つ目はゲームの販売方法の変化だ。近年、ゲームの販売・購入方法はスマホやゲーム機ともにダウンロードが主流になった。物理的なパッケージや流通の工程がない形式は販売の難度を下げたという。瞬時に世界中で販売することも可能になった。
二つ目は「パブリッシャー」と呼ばれる販売や宣伝を担当する会社とのつながりだ。漫画家が同人誌即売会で出版社と出会うように、インディーゲーム界でも「そういった仕組みができつつある」という。クリエイターがゲームを完成させ、その先の販売や広報をパブリッシャーが担当する。他言語への翻訳や多言語での宣伝販売も可能になるという。
三つ目の要因は技術的なハードルが低くなったことにある。一條氏はゲームエンジンと呼ばれる、ゲーム製作のためのソフトウェアが直近10年間で低価格化したと話す。従来は各大手ゲーム会社が独自に開発・整備していたり、使用には数千万円が必要だったりと高い技術力と資金力が不可欠だった。無料または低価格で使えるのゲームエンジンの台頭により、「プログラムの知識はまだ半分くらいです、というような人でもゲームを完成させて販売できるようになった」と明かした。
「どんなエンジンを使ってもプログラムを書くことは必要になってくるんですが、ものすごく高度なものではなくて。10年勉強しないとできなかったようなことが半年の勉強くらいでできるようになったという感じです」。これらの大きな変革が、個人や小規模でゲームを製作する流れを急速に後押しした。
一條氏によると、日本国内のインディーゲームクリエイターは推定1万人。中には高校生漫画家が活躍するように、高校生ゲームクリエイターの作品がNintendo Switchで販売された事例もあったという。
高校生・高等専門学校生のゲーム開発大会「Unityインターハイ」で2018年に優勝した作品「モチ上ガール」は、当時の高校3年生が1人で開発したもので、伸ばしたモチ(餅)を貼り付けて進むアクションゲームだ。大会当時はパソコン版のみの発表だったが、のちにパブリッシャーと契約しNintendo Switch版が発売された。「高校生でもしっかり勉強してプログラムや絵のことについて学べば、ゲーム機向けのゲームを販売することが夢ではない」と業界の未来に期待した。