“夜の街”として注目を浴びた東京・歌舞伎町のSmappa!Groupに在籍するホストたちの短歌集「ホスト万葉集 巻の二」(講談社/短歌研究社)が絶賛発売中だ。ホストクラブ6店や書店を運営する同グループの会長・手塚マキ氏(43)がホストの「教養」の意義を語った。
ホストたちが短歌を読むようになったきっかけは、手塚氏が経営する「歌舞伎町ブックセンター」で行ったイベントだった。「(従業員の)みんなに教養を身につけてもらいたいと、『本を読め、映画を見ろ』ってことを言っていた」と手塚氏。その書店に歌人・小佐野彈氏の本があり、出版イベントの企画としてホストたちが短歌に挑戦した。そこでの歌が「意外に上手かった」ことから、小佐野氏と歌人の俵万智氏、野口あや子氏を選者・指南役に迎えて歌会が始まった。2018年から月に一度、出勤前のホスト約30名を集めて開催されている。
手塚氏がホストたちに「教養」を伝えるのは「歌舞伎町という変わった空間にしかとどまれないのではなく、(一般社会と)出たり入ったりできるような人間になること」を重視しているからだ。
実際にホストでいることは、住居を借りられない、銀行から融資を受けられないなど、制約がつきまとう。「色んなところでのけ者にされてるんだって思いはある。だからこそ、教養を身につけなければ。開き直って『どうせ俺らは社会のはみ出しもんだから』となってしまったらそれで終わりだと僕は思うんで」。
昨年から続くコロナ禍で、歌舞伎町は“夜の街”と呼ばれ、それ以外の“昼の街”から疎外して語られることが多くあった。手塚氏は“夜の街”とその他を「やっぱり別だと思いますね」と話す。「昔は(ホストクラブを)一般化させて、敷居を下げるということを考えていましたけど、それにはかなり時間がかかるのかなと思って。だから、それよりも、そこで働く人間たちが出たり入ったりできるような人間たちになっていくことの方が先かなという気が最近はしてきました」と、思いに変化があったという。