中学受験をする家庭では、きょうだい全員が受験するというパターンが多い印象だ。「上の子がしたから、下の子も」という流れは、ごく自然なものとして受け止められている。また上の子の中学受験を通じてメリットを感じた親が、下の子にも同じ選択をするケースも多いのだろう。
筆者の家では、2022年に長男(現在高校1年生)が塾なしで中学受験を終え、現在は次男(小5)が通信教材を使って受験勉強中だ。その一方で、真ん中の長女(現在中学3年生)は受験をしなかった。3人きょうだいの中で、唯一の“非受験組”である。
長女が中学受験をしなかった理由は、本人の強い拒否によるものだった。もともと毎日家庭学習をする習慣があったため、小学4年生になる頃にその学習内容を中学受験向けに切り替えてみるかどうかを長女に聞いた。筆者が「中学受験の勉強、してみる?」と聞いたところ、長女からの答えは即答で「絶対いや。しない!」だった。
長男と長女は年子で、長女は長男が中学受験に取り組む様子をすぐそばで見てきた。実際にどんな勉強をして、どれほどの時間と労力が必要なのか、そのリアルな実態を知っていたからこそ、「自分には向いていない」と判断したのだろう。筆者自身も、長女は中学受験に向かないタイプだと感じていたため、無理に勧めることはしなかった。
長女の性格は一言でいえば頑固。口数が少なく、自分の意見を言うことはほとんどないが、納得していないことは絶対にやらないし、親のアドバイスもほとんど受け入れない。逆に、自分で「こうしよう」と思えば、誰に言われなくてもやるタイプだ。たとえば学習漫画なども、親の「これ読んでほしいな」という気配を察知すると、まったく読まない。
小学5年生まではそろばんと市販ドリルをやっていたが、小学6年生になると、それも拒否。完全に小学校の勉強だけになり、家庭学習はゼロに。長男との学習量の差が気になったが、自分の意思をはっきり持っていたので、筆者からは何も言わなかった。
中学3年生になった今、長女は毎日自分でコツコツと勉強を続け、通知表は5教科とも最高の成績をキープしている。今年の春頃には「受験に向けて塾に通いたい」と自分から言い出した。頑固な性格はそのままだが、自分で納得して決めたことにはしっかり向き合う姿勢が、着実に実を結びつつあるように感じている。
各家庭で中学受験に対する考え方はさまざまだが、「きょうだいが中学受験をしたから」というのは、その子が中学受験をする理由にはならないと思う。子どもはひとりひとり違う存在であり、それぞれの性格や考え方に合わせて話し合い、子ども自身と一緒に進路を決めていくことが何より大切だと感じている。
余談だが、自ら「高校受験のために塾に通いたい」と言い出した長女は、複数の塾で体験授業を受けた後、最終的に「どこもしっくりこなかった」との理由で通塾はせず、通信教材を使って高校受験の勉強をする道を選んだ。中学受験をした・しなかったという違いはあれど、3きょうだい全員が結果的に「塾に通わない」という選択をしているのは、なんとも面白い共通点だと感じている。
<プロフィール>
野田 茜
2男1女のママライター。2022年、高1長男が完全塾なしで中学受験をし、偏差値(四谷大塚)60半ばの中高一貫校へ進学。現在、小5次男が通信教材を利用し自宅学習で中学受験に挑戦中。自身は中学受験未経験で大学まで公立育ち。中学受験の問題の難易度にまったく歯が立たず、逆に子供に教えられる。「ママ、教えてあげよっか?分かる?」と次男に心配される日々。