高校1年生にとって、大学受験はまだずいぶん先の話に思える。しかし長男(現在高校1年生)の通う中高一貫校では、高校生になると模試や進路希望調査が実施され、少しずつ将来を考える空気が漂い始める。そうしたなかで、「やりたいことも行きたい大学も特にない」という生徒もいる。長男もその一人だった。
高1の春、学校で実施される全国模試を受けることになった長男が、「志望校って、何を書けばいいのかな?」と聞いてきた。模試の実施に合わせて、志望校も記入する必要があるという。特にやりたいことがあるわけでもなく、行きたい大学や学部も決まっていない長男は、何を書けばいいのか分からず戸惑っていた。筆者も「適当な大学でいいから書いておけば?」とも言えず、一緒に考えてみることにした。
まず、学部の絞り込みから始めることにした。話し合いの中で、「やりたいことが決まっていないなら、“やりたくない分野”を消していく方法を試してみよう」ということになり、長男は以前、学校から渡された「大学・学部案内の本」を開き、興味のない学部に線を引いていった。そばで見ていると、「このままでは何も残らないのでは」と心配になるほどの勢いである。最終的に残ったのは、数学系・理工系・情報工学系の3分野。算数や数学が好きな長男にとっては、自然な結果だと感じた。
次に、長男が通う学校の進学実績や大学までの通学時間など、現実的な条件を参考に、具体的な大学の候補を絞り込んだ。そのなかから5校ほどを選び、難易度の高い順に第1志望から第5志望までを記入し、模試の志望校欄を埋めた。
本人は「まだ決まっていないけど、なんとなく方向性が見えてきた」と話し、少し安心した表情を見せた。
後日、模試の結果が返ってきた。第1志望はB判定、それ以外はすべてA判定。思いのほか良い成績で、今まで遠い存在だと思っていた大学が、少し現実味を帯びてきたように感じた。本人も「この大学、手が届くかもしれない」と思ったようで、高1になってからは良い成績をキープし続けている。迷いながら選んだ志望校だったが、意外にも手応えのある結果になった。
高1の段階では、模試の志望校は今の自分を知るためのきっかけだと思う。やりたいことがまだ見つからなくても、「これは違う」と思う選択肢を外していくだけで、少しずつ進む方向が見えてくる。今回選んだ志望校は、この先きっと変わっていくだろう。けれど、徐々に進みたい道が見えてくれば、それはむしろ自然なことだと思う。
<プロフィール>
野田 茜
2男1女のママライター。2022年、高1長男が完全塾なしで中学受験をし、偏差値(四谷大塚)60半ばの中高一貫校へ進学。現在、小5次男が通信教材を利用し自宅学習で中学受験に挑戦中。自身は中学受験未経験で大学まで公立育ち。中学受験の問題の難易度にまったく歯が立たず、逆に子供に教えられる。「ママ、教えてあげよっか?分かる?」と次男に心配される日々。