Aさんは、以前から親しくしていた同じ職場のBさんが突然休職することになったと知る。会社から詳しい理由は知らされておらず、周囲からは「体調を崩したらしい」とだけ聞いていた。
数日後、Bさん本人からAさんに連絡があり、近況を尋ねるなかで休職に至った背景には、異動先での人間関係に強いストレスがあったことを打ち明けられる。心配したAさんは「会社にも事情を知ってもらったほうが復職するときに配慮してもらえるのでは」と考えた。
一方で、Bさんが会社にどこまで事情を伝えているのかは分からない。本人から聞いた話を、自分の判断で上司や会社に伝えてよいのか迷いもあった。
本人を思っての行動であっても、知らないところで休職理由を会社に伝えてよいのだろうか。また、休職中の同僚と接する際、どのような点に注意すればよいのか。産業医の石井りなさんに話を聞いた。
同僚から休職理由を打ち明けられたら…会社に伝えてもいい?
ー同僚から休職の理由や職場の悩みを打ち明けられた場合、どのように対応するのが望ましいでしょうか?
まずは相手の話を否定せずに聴き、本人が何を望んでいるのかを確認することが大切です。心配だからとすぐに解決策を提示したり、安易に励ましたりするのではなく、本人の気持ちに寄り添いましょう。また、同僚だからといって問題を解決する責任まで負う必要はありません。話を聴いたり、必要なときに声をかけたりするなど、本人の意思を尊重しながら無理のない範囲で支えることが望ましいでしょう。
ー休職中の同僚と連絡を取る際、気を付けたほうがよいことはありますか?
休職中は療養を優先する必要があるため、頻繁な連絡や、仕事・復職に関する話題は本人の負担になりかねません。連絡する際は、本人が負担に感じにくい方法や頻度を意識し、長文や返信を求める内容は避けたほうがよいでしょう。また、「早く戻ってきてほしい」「頑張って」などの言葉が、プレッシャーになる場合もあります。同僚として無理に状況を聞き出そうとせず、本人の療養を優先しながら適度な距離を保つことが大切です。また「助けが必要な時は、力になるよ」とご自身のスタンスを伝えておくと、相手にとって心強い支えになるでしょう。
ー同僚から休職理由を打ち明けられた場合、本人の許可なく上司や会社に伝えてもよいのでしょうか?
これは原則として控えるべきです。休職理由には、個人のプライバシーや健康情報が含まれ、本人が知られたくない情報が多いためです。本人を心配しての行動でも、意向に反して情報を共有すれば、信頼関係を損ねる可能性があります。
会社に事情を伝えたほうがよいと感じた場合は、まず本人の意思を確認することが大切です。そのうえで、復職時の配慮などが心配であれば、会社に直接伝えるのではなく、産業医面談や社内の相談窓口(EAPなど)といった公式の窓口を本人に案内し、本人自身がそこへ相談できるよう促すのがよいでしょう。情報を共有する場合も、本人と相談したうえで、必要最小限の範囲にとどめてください。
ただし、自傷他害のおそれがあるなど、生命や安全に関わる緊急時はこの限りではありません。その場合は、自社の産業医窓口など専門職へ報告することを考えましょう。
◆石井りな(いしい・りな) 精神科医・産業医・労働衛生コンサルタント
2010年より産業医として活動し、フェミナス産業医事務所を設立。年間1000人以上の労働者と面接し、メンタルヘルス不調の休職・復職支援、仕事と治療の両立支援、職場のハラスメント対策などに携わる。
▽フェミナス産業医・労働衛生コンサルタント事務所ホームページ
https://feminus-sangyoi.com/