シリーズ最新作「ウルトラマンアーク」見どころを識者に聞く「昭和の魅力残しつつ」「とても入りやすい」

山本 鋼平 山本 鋼平
自著「ウルトラマン ニュージェネの証 『ギンガ』、『ギンガS』、『X』、『オーブ』、『ジード』&ゼロ」を手にする切通理作さん
自著「ウルトラマン ニュージェネの証 『ギンガ』、『ギンガS』、『X』、『オーブ』、『ジード』&ゼロ」を手にする切通理作さん

 現在も地上波テレビで放送されている特撮ヒーローものはウルトラマン、スーパー戦隊、仮面ライダーの3種類。ウルトラマンの円谷プロ、スーパー戦隊と仮面ライダーの東映では特徴が異なる。「少子化の中、子どもが大人になっても見られるようにという工夫はベースにあると思いますけど」と前置きした上で「スーパー戦隊シリーズでは、フォーマットは共通していますが、始まってしばらくは仕切り直し、リセットして次の作品が始まっていました。仮面ライダーは逆に昭和の頃は先輩と後輩の関係があったけれど、平成以降は連続性が普段希薄で、そもそも改造人間という設定にもこだわらなくなった。映画や周年などアニバーサリー的な作品では集結、横断し共演しますが、基本的にはそれぞれ別々の世界になっています」と言及。一方のウルトラマンは「世界線はマルチバースですけれど、伝統へのリスペクト度がより高く、昭和から見ている人も〝ニヤリ〟とするような点も意識し続けているように感じます」と話し、「この点は東映と円谷プロの違いですね。東映も当然二つのコンテンツを大事にしていますが、基本的には長い歴史を持つ映画会社の数多いコンテンツの一つ。円谷プロは『ウルトラマン』が設立の基本にあるので、自然に制作陣も精神性を大事にしているように思います。最近の円谷プロは『想像の力』『空想の力』という理念を打ち出していますが、もともとは『空想特撮シリーズ』ですから。そうした根本のありかたを定義づけているのは特徴的でしょうね」と語った。

 特撮の取り組み方にも特徴が分かれる。「ウルトラマンは巨人として描かれていて、ミニチュアセットでの爆発の方がクライマックスになる傾向にあります」としつつ「仮面ライダーは等身大のヒーローで、昭和の作品を見返しても、バイクの後方の爆発がものすごく大きいですよね。地形が壊れるんじゃないかと思うぐらい」と述べ、ロケ現場で等身大のキャラクターが登場する爆発の方が派手に描かれる点を指摘。「仮面ライダーは本当のダムの水が流れているところで、ごくわずかなスペースしかないのにバク転したりする。しかも生身よりは動きにくくなるスーツや仮面をつけて。『特撮』というジャンルには入れられていますけど、アクションものの要素が大きい。ライダーと戦隊は『子どもが初めて接するアクション映画』だと言う声もありますが、さもありなんと思います」と語った。

 特撮への思い入れが強い円谷プロと、アクションが派手な東映。一方で平成、令和と時代が進み、3つのシリーズともCG演出などの進化が目立つ。ストーリー展開にも変化を感じるという。

 「ウルトラマンが半年間で綿密に計算されている一方、仮面ライダー、スーパー戦隊にも攻めた工夫を感じます。例えば昨年の『仮面ライダーギーツ』は、かつて仮面ライダーの〝バトル・ロワイヤル〟と言われた『仮面ライダー龍騎』(2002年)とはまた違うかたちでライダーの生き残りゲームが描かれるのですが、数話単位でルールが変わって、最終回並のクライマックスが繰り返される。何回も盛り上がりを作って、中だるみを作らないようにしているように見えました。戦隊ものでも昨年の『キングオージャー』はエポック的な作品で、LEDウォールという新技術を導入して、多くの場面でロケに行かず合成された背景、世界で役者が演技をしている。それで1年間の大河ドラマを成立させていました」

 3つの特撮ヒーローシリーズの進化を楽しそうに語った切通さん。自著「―ニュージェネの証」に関して、改めて「『ギンガ』から最初の5年間を追いかけて、スタッフキャストにインタビューをしたという内容です。僕がやりたかったのは、それ以前の平成シリーズから人の流れ、受け継がれているものを文字にすること。精神的な部分では昭和のウルトラマンからつながっていると感じましたね」と語った視点は、当然「ウルトラマンアーク」にも通じるものがある。「過去とのつながりを残しながらも新しい世界で、昭和の魅力を残しつつ、特に『アーク』は1話完結の面白さが描かれていると感じました。とても入りやすい作品だと思います」と締めくくった。

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