大魔神が復活!「妖怪・特撮映画祭」が16日開幕 ゴジラとの違い&対戦したら?研究家が解説

北村 泰介 北村 泰介
大映の特撮映画を代表する存在である「大魔神」(C)KADOKAWA1966
大映の特撮映画を代表する存在である「大魔神」(C)KADOKAWA1966

 昨年から続く「平成ガメラ」3部作4K修復版のロングラン上映、「ゴジラVSコング」「シン・ウルトラマン」公開など、今年は特撮映画の当たり年だ。さらに、昭和の映画黄金時代を彩った大映の特撮作品がこの夏、一挙上映される。「妖怪大戦争 ガーディアンズ」の8月公開を記念した「妖怪・特撮映画祭」が16日から角川シネマ有楽町、23日から埼玉県の「ところざわサクラタウン ジャパンパビリオン ホールB」で上映開始となり、その後、全国順次上映される。娯楽映画研究家の佐藤利明氏に大映特撮の特徴などを聞いた。

 同映画祭では「妖怪・怪談」「大魔神・ガメラ」「スペクタクル・ディザスター・怪奇・幻想」という3ジャンルに分け、シークレット上映1作を含む計31作を上映。「妖怪・怪談」では妖怪三部作4K修復版、新作と同じ三池崇史監督による「妖怪大戦争(2005年版)」を上映。「大魔神・ガメラ」では、66年の「大魔神」3部作4K修復版、昭和ガメラシリーズ8作などをセレクト。「スペクタクル・ディザスター・怪奇・幻想」では日本初の70ミリ映画「釈迦」などが選ばれた。

 邦画の「特撮」といえば、「ゴジラ」を軸とした東宝がメインストリームというイメージがあるが、大映の特撮にある特徴とは。佐藤氏は「東宝特撮映画は『特撮の神様 円谷英二監督』によるファンタジックなゴジラ映画、怪獣映画を夏休み、お正月映画として時代を作りました。大映、特に京都撮影所は『技術の大映』として培われてきた巧みの技で、実際には撮影できないスペクタクルをリアルに描くことを得意としてきました」と説明した。

 中でも、目玉はやはり「大魔神」だろう。埴輪のような無表情な石像が、虐げられた民の怒りのマグマに突き動かされて巨大化し、権力者に立ち向かう大魔神。その魅力の一つは、元プロ野球選手(大映が共同経営した大毎オリオンズ出身)でスーツアクター・橋本力さんの「眼力」にある。あれだけ雄弁な「目」は、そうざらにはない。そして、どこか哀愁も漂わせていた。

 佐藤氏によると、「ウルトラQ」(66年放映開始)以来の怪獣ブームを背景に、大映は「大怪獣ガメラ」の成功を受けて、特撮時代劇企画に乗り出す。「東京撮影所のガメラと京都撮影所の大魔神の同時製作可能という点が大映の強みだった」。一方、妖怪映画について、同氏は「『妖怪百物語』は68年1月にスタートしたアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』が決め手となった、空前の水木しげるブームが背景にある。いずれも怪獣ブーム、妖怪ブームにうまく乗る機敏さ、それをすぐに実現できる大映京都撮影所の技術力あればこそでしょう」と付け加えた。

 「ゴジラVSコング」にちなんで、「ゴジラVS大魔神」も空想してみた。日本のプロ野球界では90年代に巨人・松井秀喜(ゴジラ)と横浜・佐々木主浩(大魔神)が名勝負を繰り広げたものだが、そういうニックネーム対決ではなく、特撮映画のスクリーンで「元祖」のリアル対決が実現したら…。映画業界の枠組みを超え、そんな「夢対決」を提案してみた。

 佐藤氏は「大魔神も荒ぶる神、ゴジラも『Godzilla』、つまり神(God)です。大映特撮の神と、円谷英二監督が生み出した神。両者が対峙するとなれば、空前の時代劇スペクタクルが観たいですね。となると、神々の闘いになりますが、大魔神もゴジラも倒すべき相手は他にいると思います。現代社会のさまざまな問題、庶民の鬱憤(うっぷん)を、特撮映画が生み出した神が、吹き飛ばして欲しいですね」と見解を示した。

 確かに、直接対決でつぶし合うよりも、別々に個性を発揮しながら、世の矛盾や理不尽さに立ち向かう姿が求められているのかもしれない。

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