「おとぎプロはおとぎ話が多かったこともありますが、その時は手塚先生が『鉄腕アトム』を作っていて、これからはSFの時代だと思いました。辞めた途端にトキワ荘の連中から、自分たちでプロダクションをつくろうよ、という話をされました。手塚先生からもお誘いがありましたが、トキワ荘の仲間と会社をつくることを決めていました。先生に『仕方ないね』と言ってもらい、手塚プロには行けなかったですけど、好きなアニメを作れたし、手塚プロからは仕事をもらい助けてもらいました」
手塚もディズニー好きで、一緒に米国のディズニースタジオを見学するなど交流を深めた。「それもトキワ荘が中心。ありがたいですね」と改めて感謝した。
2020年7月のオープンしたトキワ荘マンガミュージアムには、鈴木氏が関わっていた。藤子不二雄Ⓐから依頼され、単行本表紙に用いるトキワ荘のカラーイラストを寄稿していた。そのイラストが建物の下敷きになったという。「横山さんのところで、アニメーションも描いていましたが、背景も描いていました。藤子さんに頼まれて、写真はモノクロでしたが、色も描きました。藤子さんからは『色も同じだね』と言ってもらいましたね」と振り返った。
今回の企画展。鈴木氏は「本当に仰天しております。こんなスゴイ展示になっていると思わなかったので、ビックリしています。本当にありがとうございました」と喜びを口にした。
同展ではアニメ制作スタジオ「おとぎプロダクション」のアニメ原画や背景画、国産初のテレビアニメシリーズ「インスタント・ヒストリー」(1961年放送)の実物資料を展示する。「スタジオゼロ」社屋の窓ガラス、自主制作作品、体験ゾーンなど、資料総数91点が展示される。さまざまなイベントも実施される。詳細は公式サイトまで。
鈴木氏は東京工芸大学杉並アニメーションミュージアムの名誉館長を務めながら、現在も現役。2004年に立ち上げたアニメ自主制作集団「G9+1」では最新作を制作中。9月16日には結成20周年イベントを東京・杉並公会堂で開催する。
◆鈴木伸一氏によるトキワ荘メンバーへの一言
寺田ヒロオ「私より二つ年上だったこともありますが、それ以上にトキワ荘の住人の中では兄貴のように頼れる中心的な存在でした」
藤子・F・不二雄「普段から真面目が服を着て歩いているような人でした。自分がこれと決めたマンガの道をひたすら突き進む人です」
藤子不二雄Ⓐ「好奇心旺盛で話好き」「つきあい上手で、人を楽しませる才にたけた人です」
つのだじろう「とても個性的で、でも真面目な人でした。私生活でもいろいろなことに興味を持って自ら入っていったようです」
赤塚不二夫「色白の美男子で、普段は人と喋る時もシャイでおとなしい青年でした」
石ノ森章太郎「ものすごいスピードで絵を描く才能がありました。誰もまねができない速さで完全なものを描くことができました」