「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」などのヒット作で知られる漫画家の松本零士さん(享年85)が今月13日に急性心不全のため都内の病院で死去していたことが20日、発表された。特撮キャラクター収集家としても知られる芸人・なべやかんが、少年時代から憧れた松本さんの自宅を訪ね、夢の面会を果たした「至福の1時間」を振り返った。
◇ ◇ ◇
またもや漫画界の大御所が逝ってしまった。先生たちの漫画で人格形成された部分も多いので悲しみは無限大だ。松本零士先生の訃報を聞いた瞬間、宇宙戦艦ヤマトや銀河鉄道999の映画を初日に観に行った事を思い出した。
当時は今と違い時間指定はブルジョアな指定席だけ。後は全て自由席で入れ替えもない。立ち見で見る事もざら。ヤマトと999は渋谷パンテオンで観たのだが、行列はパンテオン裏の宮益坂の上の方まで続いていた。それを並んで観たのだから今では考えられない。
そんな思い出話を松本零士先生に直接話した事があった。玩具プロデューサーの安斎レオさんのお供で零士先生宅にお邪魔した事があった。
先生に面会する前、待機場にいると、担当の人から「時間がないので20分くらいで」と言われた。前の人の面会が終わるのを待っている間、携帯をいじると圏外になっていた。レオさんが「先生宅は防犯対策がすごいから圏外になるのよ」と教えてくれた。万が一のために窓は防弾ガラスで電話も盗聴器が付けていたらしい。
そんな話をしていると奥様の(漫画家)牧美也子さんがお茶を出してくれた。ここでも我々は「(初代)リカちゃんを描いた人だ!」と大興奮。先生と面会する直前にも側近から「時間厳守で」と言われ、先生の部屋に入った。
部屋に入ると先生は上機嫌でこちらから何も質問していないのに色んな話をしてくれた。メーテルのモデルがいた話を中心に自分が描く女性に関して色々と教えてくれた。ヤマトの構想も話してくれ、すごい事を聞いてしまったと思ったくらいだ。
この時に映画初日に行った思い出話をするとニコッとしてくれた。そうこうしているうちに時間はあっという間に1時間以上経っていた。
「先生、お忙しいでしょうから、そろそろ」と言うと、「サインを描きましょう。何が良いですか?何でも描きますよ」と言って下さったので、滅多に描かないものを描いてもらいたいと思い、「波動エンジンをお願いします」と言うと、「それは覚えていないな…」と困り顔をされたので、「メーテルでお願いします」と先生が描きやすいものをお願いした。
その後、先生にお会いする機会はなかったが、お笑いライブに出演時、出番前にライブハウスの入った雑居ビルから外を眺めていると、横にいた芸人が「松本零士だ!」と叫んだ。彼の指さす方向を見ると、通り向こうのビル会議室に零士先生が座っていた!これも貴重な体験。先生、素敵な時間をありがとうございました。