2022年6月に施行された「AV出演被害防止・救済法」(AV新法)が2024年6月に見直されるのを前に、同法を出演者や業界にとって適正な法律へ改正することを目指したシンポジウムが20日、都内で開催された。
AV産業の適正化を考える会が主催。シンポジウムには、発起人の二村ヒトシ監督や米国で活躍するセクシー女優のMARICA、制度アナリストの宇佐美典也氏らが出席。NHKから国民を守る党の浜田聡参院議員と衆院、参院議員だった国民民主党の樽井良和氏も参加した。
二村氏は「女優さんたちを守るためにつくられたはずのこのAV新法が、このまま見直されることなく固まってしまうと、何よりも女優の労働の自由と表現の自由がかえって脅かされ、我々の業界の悪い部分まで温存してしまいかねない」と訴えた。
業界関係者やセクシー女優とともに、全国でAV新法改正に向けた署名活動を展開する二村氏は「我々がどういう風に考えて声を上げたのかということを、アダルトビデオを愛する方たちに、もしくはアダルトビデオというものを誤解して『そんなものはなくなってしまえ』と思っておられる方たちにも、我々の本当の思いを届けていただきたい」と語気を強めた。
宇佐美氏は「本来、AVの出演者を守ろうと、弱い立場の人を守ろうという法律だったはずが、いちばん弱いところがいちばん経済的な影響を受けて、法律が危惧するところのアングラな現場に流れているというところがこの法律の施行の効果」と指摘した。
2024年6月のAV新法見直しに向け、同法をつくった関係議員は①性行為映像制作物の公表期間について「○年以内」としなければならない旨の規定を設ける②性交を実際に行う、いわゆる本番行為の撮影を内容とする契約のあり方について検討を行う、などとしている。
宇佐美氏は「一点目は、AVの公表期間は何年以内としなければならない、というような一律の制限を設けるということ。二点目は、いわゆる本番行為というものを契約に盛り込むことは無効にした方がいいかどうかを議論するということは予定されている。これが本来どういう効果を生むか、適切かということは別にして、こういうことが議論される予定」と説明した。
AV産業の適正化を考える会の活動に賛同する亀石倫子弁護士は「AV新法をつくろうと、こういう法律が必要だって思っている方々の中には、この表現に対して価値がない、この表現は良くないっていう気持ちが垣間見える。憲法で保障されているという表現の自由っていうのは、表現する価値があるかないのかを議論するものではない」と強調した。
さらに「価値がある人にとってはある。ない人にはない。AVはたぶんそういうものであって、価値のある人にとってはあるけども、嫌いな人にとっては価値がない。ただ、表現である以上はそれを守るというのが憲法の表現の自由。女性であっても、AVを見たことがなくても、関係ないことではないということを知ってほしい」と述べた。
発起人のひとりで、米国でポルノ女優として活躍するMARICAは「私自身がそうだったように、自分で選んで自分で誇りを持ってやっている仕事だと思うので、変な法律、納得できない法律があったらみんなで立ち向かって、負けないで仕事をしてください」と呼びかけた。
「玉木雄一郎代表の代理で来ました」と切り出した樽井氏は「国民民主党は、党を挙げて表現の自由を守るということを訴えておりまして、玉木代表が『きょうここで絶対に言ってきてくれ』と言ったのが、職業に貴賎がないということと公権力が表現の自由を規制すべきではないと。エロに始まって最終的に言論統制になって今までろくなことがない。国民民主党の中にも、この法案がおかしいと思っていない議員が何人かいて、割れているところがある。私はおかしいと思っているので、戦う準備もありますし、代表とか(榛葉)幹事長に申し出ていこうと思っている」と熱弁した。