飲食店テロ防止の「しょうゆ差し」を開発!注ぎ口に工夫 発案の大学生「ダサい迷惑行為」に一石

北村 泰介 北村 泰介
 ※画像はイメージです(naka/stock.adobe.com)
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 名古屋市内の大手回転ずしチェーンの来店客だった21歳の男が「しょうゆ差し」をなめる様子を撮影してネットに公開するなどした威力業務妨害の疑いで3月に逮捕された。それ以前から、複数の飲食店で若い世代による動画配信を目的とした迷惑行為が相次ぎ、社会問題になっている。こうした〝飲食店テロ犯〟に対し、同世代でもある大学生らが小学生と共に、注ぎ口に工夫を凝らした「しょうゆ差し」を開発した。その経緯や思いを聞いた。

 商品名は「テロ防止醤油さし」(「ペロ防止」との別称も)。注ぎ口をなめる行為を防ぐ工夫が施されている。株式会社「悟空のきもちTHE LABO」が3月28日から注文受付を始め、飲食チェーン1社以上の受注があれば発売が決定するという(6日現在)。

 同社は、日本初の頭のほぐし専門店「悟空のきもち」が「子どもの可能性をビジネスチャンスにつなげる」というコンセプトで立ち上げた実験ブランド。昨年、ランドセルの重量化対策として2本のスティックでキャリー化した商品「さんぽセル」を当事者である小学生の発想から開発して反響を呼んだが、その企画会議に参加していた栃木県の小学5年生の双子男児らが今回も協力。大学生と共に回転寿司チェーンに通い、店舗のオペレーションや来店客のしょうゆの使い方の傾向を調査した結果、「お店の負担も少なく、お客さんも安心できる『最適解』を発明した」という。

 しょうゆの注ぎ口部分を随時交換できるように設計。外から指が届かない内部に本物のフタ機構を設け、口の部分は「鍵」の役割で、それを挿さなければしょうゆが出ない仕組みになっている。さらに、口の部分に唾液を注入しようとしても、内側の気圧差によって、しょうゆ本体への混入を防げるように工夫した。しょうゆだけでなく、酢やソースなどボトル型容器には全て対応可能であり、上部は動物などの顔でデザインされ、今後、店舗のマスコットキャラクターなどでカスタマイズもできるという。

 開発に携わった琉球大学3年の太田旭さんに話を聞いた。

 -複数起きている飲食店テロ事件の共通点は、若者が「動画の配信ネタ」として迷惑行為を繰り返していること。同世代の人たちによる、そうした行為をどう思うか。

 「度胸試しでやってしまうような風潮があると思いますが、人に迷惑のかかるやり方も、何もすごくなくてダサいと思います。度胸試しがしたいならバンジージャンプやるとかでもいいし、正直もっとすごいことが、あると思います!」

 -〝大人〟になっても迷惑行為をする人たちへの小学生たちの反応は?

 「小学生たちも『なんかこれダサいね』、『僕たちが解決したらヒーローだね!』って言いながら協力してくれました」

 -「飲食テロ対策しょうゆ差し」の開発で苦労したことは。

 「開発では、実際に回転寿司店で寿司を食べながら、オペレーションやお客さんの趣向を確認しながら仕組みを考えました。毎回お腹いっぱいでした。苦労したことは、しょうゆは出るけど、唾液は入れられないという仕組みです。試行錯誤を重ねて、ストローを鍵のように使うことで逆流を防ぐ方法にたどり着きました」

 -商品化への手応えは?

 「発表から数日ですが、もう既に飲食店チェーンから問い合わせをもらっています。このしょうゆ差しが飲食店の安全性を証明するために使われるとうれしいです」

 -こうした対策をしなければいけない社会の現状について思うこと。

 「若者のモラル低下が言われていますが、昭和の時代を調べていくと、昔は、みんな平気で道にゴミを捨てていたとか、電車でタバコを吸っていたり、放し飼いの犬がいっぱいいたとかあり、そう考えると令和の時代、社会のモラルは実は、めちゃくちゃ上がってるんじゃないのかなって思います。すべてを若者のモラル低下や、SNSのせいにはできない。もちろん、僕たちより上の世代や、時代のせいでもない。批判だけして不安を広げ、積み上がっている問題にみんなで慣れてしまっていることが、いまの社会の現状だと思います。僕たちは、これから学び、社会のいろんな問題を、美しく解決する大人になりたいです」

 飲食店テロ防止の一助となるか、今後の展開が注目される。

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