「神戸牛」はおいしい肉だけじゃない 革製品にも活用して無駄なく使い切る 

中江 寿 中江 寿
但馬牛
但馬牛

 日本だけでなく、世界から高い評価を受ける「神戸ビーフ」。厳選された「但馬牛」の肉だけに与えられる称号だ。国内には多くのブランド牛があるが、最もメジャーなブランドのひとつである。肉ばかりに注目が集まるなか、その原皮も活用されている。おいしいだけじゃないのだ!

 それが「神戸レザー」というブランド。小売店、メーカー、タンナー(革のなめし業者)などにより2019年7月に設立された「神戸レザー協同組合」が「神戸ビーフ」とされた但馬牛の原皮だけを選別して「神戸レザー」と認定。他の肉牛に比べてやや小ぶりだが、その原皮は繊維がしっかりしていて丈夫さが特長で、同組合が中心となって皮革製品の小物、バッグなどを生産、販売している。

 設立のきっかけについては担当者は「『神戸ビーフ』をつくり出す牛の皮革も使うことができないかという発想から始まりました」と説明。現在は経済産業省、兵庫県、神戸市から支援も受けている。他にもさまざまな団体から協力や提携なども。「きちんと自分たちが何者であり何を実現するために、このブランドを立ち上げるのかを関係する機関にきちんと説明して回りました」。地道な活動が実を結び、革の素材としては初めて地域団体商標を獲得した。

 組合が本格始動前の19年4月には、イタリア・ミラノで開催された世界最大級の国際家具見本市「ミラノサローネ」にデザイナーを介して出展。若手デザイナーのひとつの部門では「食のデザイン」というテーマで、「神戸ビーフの副産物を価値の高いものに生まれ変わらせた」と最優秀賞を受賞した。

 また、今月19日~23日までフランス・パリで開催されるインテリア業界の〝パリコレ〟「メゾン・エ・オブジェ」にも出展する。コロナ禍もあって、同イベントには3年ぶり2回目の参戦。国内だけでなく、海外にもブランド力を発信している。

 現在の販売経路は国内が7割、海外が3割程度。小売店舗がメインだが大手百貨店での取り扱いも一部行っている。担当者は「神戸牛と聞いて驚かれることが多いです。皆さん神戸牛って牛肉のイメージしかないので、革もあるんだということで驚かれます」と反響の大きさを感じている。

 「商品そのものの魅力とともに、神戸牛をアップサイクルしてというストーリーにも共感頂ける方が多いと感じています」。本来捨てられる部分だった原皮に付加価値を付けることも、大きな魅力のひとつとなっている。

 「神戸レザー」の立ち上げから日は浅く、「まずは神戸牛の革を全量使い切ることが当面の目標です」と先を見据える。「ブランド化し商品化を進めているとはいえ、まだわれわれが取り扱えていない神戸牛の革があるので、それを無駄なく使い切ること。そしてそれを世界で評価してもらえるようにしていくことが現時点の私たちのミッションです」。モノを大切に使う願いが込められている。

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