大阪市初の公認「同性パートナー」女性の偽らざる本音 「婚姻」にこだわる理由とは

ぽすわんのカノー ぽすわんのカノー

今年3月、札幌地方裁判所にて「同性婚を認めないことは違憲」という判決が出た。当事者の多くにとっては嬉しいニュースだったと言える一方で、非当事者(異性愛者)の間では婚姻にこだわる当事者の姿勢に疑問の声が多いようだ。事実婚など多様な結婚観が広がる中、なぜ同性婚が必要だと考えるのか?大阪市の特定非営利活動法人「カラフルブランケッツ」の理事長でレズビアンの井上ひとみさんに話を聞いた。

井上さんは2018年に大阪市で「大阪市パートナーシップ宣誓証明制度」が導入された際、市が開いた意見聴取会などにパートナーと積極的に参加し、交付当日には吉村洋文市長(当時)から証明カードを手渡しで受け取る様子がテレビでも放映された。

ーー2015年に同性愛カップルを公的なパートナーであると認める「パートナーシップ証明制度」が渋谷区で全国に先駆けて開始されました。パートナーシップ制度についてどのように感じておられますか?

井上:パートナーと同じ家に住み、生計を共にしているにもかかわらず、家族であると公的に認められないことを残念に思っていた私は、渋谷区の制度を羨ましいと感じていました。

ーーその後、2018年に大阪市でも「大阪市パートナーシップ宣誓証明制度」が始まり、井上さんも証明カードを交付されてますね。

井上:もらった当初は、印籠のように出したいくらい嬉しかったです(笑)

ーーパートナーシップ制度がある今、同性婚を希望する理由は何でしょう?

井上:実は、この制度に法的拘束力はありません。証明書、友達、周りの人が認めてくれていても、私たちは戸籍上他人扱いです。ただ、制度をきっかけに携帯会社の家族割など協力的な企業が増えています。私が病気をして緊急連絡先にパートナーの名前を記入した際は、病院側から戸籍上の家族を書くように言われましたが、制度を説明した結果、特別に認めてもらえた事もありました。

ーー不動産などの遺産相続も大変だと聞きました。

井上:家を購入した際、同性パートナーと共同でローンを組める所が無かったので名義人は私です。万が一、私が亡くなった時に法律上他人のパートナーが家を出なくていいように公正証書を交わしています。手続きの費用は優に10万円を超え、本当に大変でした。同性婚が認められれば不要な手続きです。

ーー国に対する同性婚訴訟が起こっていますが、井上さんはどう感じますか?

井上:同性婚が認められない現状が「あなたたちを平等に扱うつもりはありません」という国の意志のように感じて怖いのです。明文化していなくても差別を助長しているようで、悲しいですね。現政権ではLGBTに対して否定的な声が目立ち、放っておいて解決するとは思えません。憲法改正にしろ特例法の制定にしろ、社会的な機運が高まらない限り議論の対象にすらならないと思うので、引き続き同性婚訴訟などで問題提起をすることが大事だと考えています。

ーーカラフルブランケッツでは8月にLGBTQカップルを取り巻く現状や課題について学ぶ展示会「私たちだって“いいふうふ”になりたい展in西宮2022」を開催されますね。

井上:この度、兵庫県西宮市で2回目となる同性婚についての展示会を開催することとなりました。昨年大阪市で行った第1回の展示では、3日間で300人を超える方にご来場いただきました。非常に好評でしたので、この度開催できることが非常に嬉しいです。

ーー展示会にはどのような方に来て欲しいですか?

井上:全ての人に気軽に来てほしいですが、特に同性婚なんて自分には全く関係ないと思っている人にこそぜひ見に来て欲しいですね。非当事者の方の周りに、悩んでいる人がいるかもしれません。愛するふたりが同性だという事で得られない物がたくさんあります。多くの人の気付きにつながる展示会だと思っています。

  ◇  ◇

「私たちだって“いいふうふ”になりたい展 in 西宮2022」は7日間の会場展示のほか、8月21日にはYouTube配信にてオンライントークショー(無料・予約不要)の開催も決定している。ぜひ多くの方にご覧いただきたい。

「私たちだって“いいふうふ”になりたい展 in 西宮2022」

会期:2022年8月20日(土)~8月26日(金)
会場:西宮市男女共同参画センターウェーブ(西宮市高松町4−8プレラにしのみや4階)
主催:特定非営利活動法人カラフルブランケッツ
共催:西宮市
入場無料、申込不要
展示会詳細:http://www.colorfulblankets.com/index.php/information/a-beautiful-blog-8

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