ボウリング競技でレーンに並ぶピンは10本だが、その5倍に当たる50本ものピンを並べるボウリング場が東京にあるという。4月1日のエイプリールフール、ウソかマコトかを確かめるべく、新宿・歌舞伎町に足を運んだ。1971年に同地でオープンし、現在、新宿駅周辺では唯一のボウリング場となった「新宿コパボウル」の50周年企画として開催されるイベントの一環だという。人は「一発勝負」で50本のピンを倒すことができるのか?無謀な挑戦を敢行した。
50周年は昨年だったが、コロナ禍の影響で今年4月1日から28日に「50年の感謝をこめて プレイバック1971」と題して開催。1日からボウリングスコアが50の倍数で景品をプレゼントする「スコア50倍チャレンジ」といった企画を始め、今回、記者が一足先に試投した企画「50ピン★チャレンジ」は15日にスタートする。午前11時から1日先着10人限定(料金は税込1100円、購入時にSNS投稿する旨を伝えれば500円)で、パーフェクトなら1か月分無料券 (30枚)が、49ピンから0ピンまで無料券の枚数が9枚から1枚まで贈られる(翌日から2か月間有効)。ビルの3、4階にある同店は全31レーンで、50本のピンは4階の16レーン中、4レーンで対応する。
50本のピンは整然と並べられていた。幅は通常のレーンで約1メートルだが、奥行きは2・6メートルと深い。通常の10本なら機械がセットするが、50本の場合は木枠の穴に1本ずつ、田植えのように人がピンをはめ、そっと外すと完成だ。1本約1・6キロでトータル80キロ。一投で倒すには、やはり相当なスピードとパワーが必要か?プロボウラーから学んだ同店ベテランスタッフに聞いた。
「まず、自分に適したハウスボールを選ぶこと。自分に適したサム(親指)ホール(穴)の大きさは、ボールラックに置いてあるボールに親指のみを入れてみて、親指が根元まで入るホールサイズ(指穴の大きさ)、かつ親指の側面(皮膚)がホール触れ、また、親指を回せることができるホールサイズがベストです。重さは一般男性が12~15ポンド、女性は非力な方で7~8ポンド、力がある女性は9~11ポンドで、自分に合ったボールを選ぶことでコントロールがしやすくなります。より重く、よりスピードが早いことでピンは倒れやすくなる。続いて、ヘッドピン(先頭のピン)に当てること。50本のピンの間隔が近く、密集しているため、ヘッドピンに当たらなくても後ろのピンが前に倒れて結果的にヘッドピンも倒れるということもあるでしょうが、ヘッドピンに当てるに越したことはないと思います」
ボールラックには7ポンド(3・2キロ)から15ポンド(6・8キロ)まで9種類あり、記者は穴の大きさと重さで負担を感じなかった10ポンド(4・5キロ)を選んだ。実は10数年ぶりのブランクがあって不安だったが、軽く助走を付けて投じると、ヘッドピンのやや右寄りに当たった。ドミノ倒し的にピンが倒れていき、7本を残して「43ピン」という結果に。相当数のピンが次々に転がる場面を目の当たりにするのは爽快感がある。そして、もう少し重いボールとスピードアップによってパーフェクトも可能だと実感した。
公益社団法人「日本ボウリング場協会」の調べによると、日本全国のボウリング場の施設数は新宿コパボウルがオープンした71年当時は3697軒あったが、消費人口の減少や娯楽の多様化の影響を受け、735軒(※2019年8月時点)まで減少。新宿駅周辺はかつて、ミラノボウル、新宿松竹ボウル、新宿トーアボウル、ニューコパボウルなど多くのボウリング場がひしめく激戦区だったが、現在は新宿コパボウルのみだ。
そうした背景の中、社員全員から募ったアイデアから、同店のスタッフが選んだ企画が「50本ピン倒し」だった。期間中は71年に誕生した日清食品「カップヌードル」、森永製菓の「小枝」と「チョコモナカ」、明治製菓「チェルシー」といったロングセラーの人気商品や新宿コパボウルの歴代ユニフォームが店内のショーケースに展示され、「原点」を見つめ直す機会にもなっている。また、会場には歌舞伎町らしさを演出したホストクラブ調の実況が流される。
担当者は「常識にとらわれないチャレンジを楽しんでいただけましたら幸いです。ボウリングは昔から変わらないという印象を多くの方がお持ちだと思います。そのイメージを変える、新鮮なイベントをやりたくて、ピンの数を5倍にしたら面白さも5倍になるという仮説から生まれた企画です。5倍面白くなっているか、多くの方に検証しつつ楽しんでいただけましたらうれしいです。ご好評いただけましたら、100本チャレンジまで進化させたいです」と意欲的だった。