千葉県印旛沼に大量発生したヒシを採取する忍者が話題になっている。
印旛沼では近年、水面を覆いつくすほどのヒシが大量発生し、水質汚染、船の航行に支障をきたすなどの問題を抱えてきた。そこで立ち上がったのが、日本の忍者たち。世を忍ぶイメージのある忍者があえて顔出しで「生産者の顔が見えるマキビシ」というフレーズと共に紹介した大量のヒシの画像はSNSで拡散され3.5万いいねを獲得。
今回の投稿主である忍道師範の習志野青龍窟(ならしのせいりゅうくつ)さんに話を聞いた。
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ーーヒシを採取するようになった経緯は?
習志野:マキビシはヒシの実を用いることから、忍術研究の一環でヒシの採取をしていました。印旛沼のヒシは形がよく武器に適しているんです。そのご縁で印旛沼の環境改善などを行うプロジェクトチーム「まるごと印旛沼」の皆さんと知り合い、ヒシ大量発生の問題を知りました。そこで、忍者と絡めた取り組みができないかと思ったんです。
ーー収穫量は?
習志野:数十kgほどです。「まるごと印旛沼」チームや私の忍者仲間の他に、ヒシの再利用を研究して商品開発などされている企業の皆さんや、子供達も参加しました。雨の中でしたが大喜びでした。
ーー食用にもなるんですね。
習志野:生食は衛生面などから推奨しませんが、味は梨やヤーコンに似ています。皮を剥い炊き込みご飯にすると美味しいです。忍者仲間は油で揚げてフライドヒシにしたら美味しかったと言っていました。
ーーマキビシにも加工できるんですか?
習志野:武器としてのマキビシは、発芽後の殻がタンニンの成分によって硬化したものを用います。なので収穫した緑の身が入っているヒシは武器には適しません。
マキビシの威力は、足で踏んだらその場から動けなくなるくらい鋭く刺さり、足止めした所を攻撃したり、逃走したりする術が忍術にはあります。昔の日本は裸足か草鞋が一般的でしたから効果的だったのではないでしょうか。
ーー忍者として目指しているものは?
習志野:名前くらいは知っていても、掘り下げるとあまり知られていないものは多々あります。マキビシもその一つで天然のヒシという植物からできていること、その植物が食べられること、印旛沼の課題になっていることなどあまり知られていません。ちょっとした関心から子供達の学びなど文化の発展に寄与できたら。それが私の忍道家としての使命でもあると感じています。
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SNSでは「本物を初めて見た」「食えたのかコレ」「追手を何人止められるんだ!」「素敵な笑顔すぎる」など多くの反響が集まった。環境問題から教育に、令和の忍者に注目していきたい。
習志野青龍窟(ならしのせいりゅうくつ)さんプロフィール
伝統文化の発信を修行の一環とする都内の忍者団体に所属し、都内を中心に忍道教室を展開する
Xアカウント:https://x.com/3618Tekubi