超進化のサッカー盤 オーバーヘッドキックに込められた職人魂

山本 鋼平 山本 鋼平
オーバーヘッドキック(サッカー盤 ロックオンストライカーDX オーバーヘッドスペシャル サッカー日本代表ver.より)
オーバーヘッドキック(サッカー盤 ロックオンストライカーDX オーバーヘッドスペシャル サッカー日本代表ver.より)

 昔懐かしいアナログ玩具が、大幅に進化を遂げていたことをご存じでしょうか?エポック社のサッカー盤シリーズ「ロックオンストライカーDX オーバーヘッドスペシャル 日本代表ver.」は2018年に発売されていますが、おじさん世代の想像をはるかに上回っていた進化の裏話を、同社の開発担当者に聞きました。

  サイドから上がったクロスボールを、後ろ向きに反転してオーバーヘッドキックで捉えてゴールに突き刺す。テレビゲームやスマホゲームでは珍しくないシーンだが、サッカー盤で再現するのは並大抵のことではない。担当者は「サッカーといえばオーバーヘッドキック。子どもたちが最も憧れるシュートですから、ぜひ形にしたかった」と、開発の動機を語った。

 手元のレバーを押し引きし、左右に回すことで人形を操作。ボールを相手ゴール前に陣取るフォワードに合わせ、またはサイドからのロングシュートで得点を狙っていくサッカー盤は、1965年に発売された。1958年に発売された野球盤の最新版では、地面を転がすどころか空中で変化球を交えて9分割に投球し、本塁打は放物線を描いてスタンドインするまでに進化していることに比べて、サッカー盤では新機能の追加が極端に少なかった。「サッカー盤の完成度がもともと高かったことの表れなのですが、野球盤のことを考えると物足りなかった」。2013年にリニューアル版開発に着手し、2017年に「ロックオンストライカー」を発表。ゴール率をアップさせる「ロックオンポイント」の追加を筆頭にシュートが決まると揺れるゴールネット、オートセンターリングによるクロス、操作性を向上させるボールレーン、ゴール前でボールを抑えゴールキックで攻撃参加するゴールキーパーなどの機能が誕生した。

 そして翌年、フィールドが拡張され、オーバーヘッドキック機能を追加した「DX版」を発表。フォワードを後ろ向きにゴールに向けて移動させると、フィールドの突起が左足のロックを外し、バネの力で体が反転、右足が空中で弧を描く。ゴールに正対させるとロックが外れないようになっており、ヘディングやボレーシュートを狙う格好になる。タイミングはかなりシビアだが、その分決まった時は爽快だ。「磁石を使った案もあったのですが、この形に落ち着きました」と振り返った。

 ただ、ギミックそのものよりも重視する点がある。「一番大事なのはキチンと動くことです。これはアナログのおもちゃ全てに当てはまりますが、すぐに壊れたり、動作不良が多いと信頼をなくします。お客様に多大な迷惑をかけてしまいます」と担当者。最も注意したのはセンタリング機能で、クロスの飛距離をダイヤルで調整できるようにした。

 コロナ禍前のある日、担当者は大手玩具売り場に足を運んだ。展示された「DX版」で親子がプレーする光景に喜びを感じたという。「スマホで遊ぶ子どもが増えていますが、家族が一緒に楽しめるのはアナログの良さではないでしょうか」。売れ行きは好調に推移しており、ワールドカップなどのイベントでは〝特需〟が見込まれるのが特徴のスポーツゲーム。東京五輪が閉幕し、次はパラリンピックが始まる。担当者は日本勢の活躍を楽しみにしつつ「子どもたちがマネをするスーパーゴールや、特徴的なシーンがあれば、新しい機能のヒントになるかもしれません」と期待を寄せている。

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