ガンダムZZ、オメガトライブ、パル 新井正人の多彩な歩み「音は神様からのプレゼント」

山本 鋼平 山本 鋼平
力強く優しい歌声を披露する新井正人
力強く優しい歌声を披露する新井正人

 1986年に「機動戦士ガンダムZZ」の主題歌「アニメじゃない~夢を忘れた地球人たちよ~」「時代が泣いている」を歌った新井正人さん(63)は、大みそかに名古屋でアニソンライブを予定しており、たいらいさお、MIQ、鮎川麻弥、ひろえ純、宮本佳那子と共演する。アニソン歌手として精力的に活動する一方、シンガーソングライター、コーラスグループ・パルのリードボーカル、オメガトライブの3代目ボーカリスト、音大講師の顔を持つ。「なぜか業界内では僕がバラバラに認識されているようです」と、笑顔でその歩みを語った。

 1977年のデビューから44年。水泳などで体を鍛え、優しい歌声は健在だ。「アニソンは崩して歌ってはいけない。ファンが昔に聴いた時の印象を壊してしまいますから。当時も子どもたちのために、きっちり歌おうと心がけていました。今も正しくリズムを刻めるよう、体調には気をつけています」と、秋元康の作詞が話題となったガンダムシリーズの名曲に思いを込める。

 1986年は、水木一郎、堀江美都子らが担ったテレビまんが主題歌と、90年代の人気ミュージシャンによるタイアップ曲が主流になる過渡期にあった。1983年の解散まで在籍したパルでは、荒木一郎が作詞作曲を手がけた「夜明けのマイウェイ」が50万枚を超えるヒットを記録し、NHKアニメ「太陽の子エステバン」の主題歌を担当した。解散後の3年間は、作詞作曲や来日時のベイ・シティ・ローラーズのバックコーラスを務めるなど、アーティストとして技量を磨いた。ソロデビュー曲に「ニューミュージックの色を出したい」とアニメソングが打診された当時を「もともと宇宙やSFに関心を持っていました。実際に大田区でパイプ型のUFOを目撃したことがありますし、喜んで引き受けました。アニメなのにアニメじゃない、という歌詞にもひかれました」と振り返った。

 自身のソロ活動はシティ・ポップやAORに分類される。並行してCMなどへの楽曲を提供し、ブライダル会社にクラシック調の場面曲をつくったこともあった。楽曲提供に力を入れていた1993年、誘いを受けて杉山清貴、カルロス・トシキに続くオメガトライブ3代目ボーカルとしてブランニュー・オメガトライブに参加。その後も前川清に歌謡曲を提供するなど、ジャンルを横断する活動を続ける。2015年、たいらいさお、MIQとユニットST4を結成し、老人ホームへの慰問などさまざまな場で歌謡ショーを実施。2017年には洗足音楽大学の非常勤講師に着任した。今年11月発表の TATEDUKA2000のクリスマスソング「Christmas blue」、今月発表のU more「Gift」にボーカル参加するなど、新たな仕事にも意欲的に取り組んでいる。

 さまざまな活動を「音楽は全部好きですし、仕事ですから」と自然体で受け止める新井さん。逆に周囲が混乱するケースがあった。「新世紀エヴァンゲリオン」で有名な歌手・高橋洋子が名曲をカバーするアルバムを出した際、採用したパルの「夜明けのマイウェイ」について「パルの新井正人さんにお会いしてみたいです」と答えた記事を目にし、「少し前に九州のアニソンイベントで共演したのに…」と苦笑したという。オメガトライブを主導した名音楽プロデューサー藤田浩一が2009年に他界した際、お別れの会で藤田がプロデュースしたバンド・レイジーからアニソン歌手に転身した影山ヒロノブと同席した。ゲーム「スーパーロボット大戦」の企画で「アニメじゃない」をカバーされていたことから「影山さんの『アニメじゃない』聴かせていただきました」と声を掛けると「もしかして本家本元の新井さんですか?」と尋ねられ「はい僕です」と応じた。「影山さんは『ずっと新井さんを探してました』と驚いていました。僕は〝オメガトライブの新井〟で認識されていて、ガンダムZZとはつながっていなかったみたいです」と楽しそうに話した。ファン層はパル、ガンダム、ソロ活動、オメガトライブと分かれて、あまり交わらないという。

 新井さんは1958年3月25日に千葉県松戸市で生まれた。ボサノヴァ、アメリカンポップスが好きな母、端唄、小唄、浄瑠璃、さのさを好んだ父、三味線を引いていた祖父の影響を受けた。演歌やクラシックにも親しんだ。小学校6年生でギターを、中学校1年生で作曲を始めた。日大一高を卒業して間もない1976年、バンド活動中にスカウトされ、デビューに至った。

 「機動戦士ガンダムZZ」放映から35年。今も多くのファンに愛される「アニメじゃない」。新井さんは「サウンドは僕の中に深く刻まれているので、大切に歌っていきたい」と決意を新たにし、「音は神様からのプレゼント。だから無限に楽しい」と続けた。ジャンルにこだわらない道を、これからも進んでいく。

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