深刻な空き家問題 うっかり他人に貸すと期間限定でも「出て行ってくれない」なんてことに

~元アイドルの弁護士が分かりやすく解説

平松 まゆき 平松 まゆき
写真はイメージです(decoplus/stock.adobe.com)
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 近年、空き家問題が頻発しています。使用していない家を誰かに貸したいとのご相談も増えてきました。賃貸借契約においては、開始時はあまり問題になることはないのですが、終了時にはさまざまな問題が浮上します。そもそも賃貸借契約の終了にはどのような手続きが必要でしょうか。

 先日、「家を探していた知人に『1年間だけ』という約束で貸していた家の契約期間が満了したので、知人には退去してもらいたいが、なんだかんだと理由をつけて出て行ってくれそうにない」との相談を受けました。たしかに、1年間という期間を設けて賃貸借していたのであれば、期間が満了すれば当然に出て行ってもらえそうです。

 しかし、賃貸借契約を終了させるためには予想外に高いハードルがあります。

 ご相談の事例のように、賃貸借契約において契約期間の定めがある場合、貸主は契約期間満了日の1年前から6か月前までの間に「更新拒絶通知」を借主に出すことが必要です(借地借家法第条1項)。そのうえで、契約の終了に「正当事由」があると認められなければ更新拒絶をすることができません(借地借家法条)。この正当事由は、賃貸人及び賃借人がそれぞれ当該建物の使用を必要とする事情のほか、賃貸借に関する経過、建物の利用状況や現況、立退料の申し出、といった要素を総合的に考慮して判断されます。

 ご相談のケースでは、貸主さん側にその家を必要とするどのような事情があるかをまずは詰めていく必要があるでしょう。これがなければ始まりません。或いは、家が老朽化していて借主や第三者に危険が及んでおり、解体や大修繕の必要がある場合等には正当事由があると認められやすくなります。さらに、補完的要素として、借主に立退料を申し出ているというような事情も考慮の対象となります。立退料の問題は、借主がその建物を利用してお店をしている場合等に特に考慮されます。

 あまりよく考えずに、他人に空き家を賃貸する方もおられるようです。しかしたとえ好意で貸していたとしても、そして期間を定めていたとしても、賃貸借契約を終了させるのは意外と難しいのです。

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