窪田氏のこだわりは「思いを伝えること」というシンプルなもの。「ナレーションって、極端な事を言えば、何でもいいんです。ただ、昔から大事にしているのは、聞く方に言葉が抵抗なく入っていくこと。言葉がスーッと入ってきて、映像に進んでいける、そういうものを目指している」と明かした。
一方で、昨今、主にバラエティー番組における特徴は「引っかかりのある言葉が求められる。強い調子になる。耳にグッとささるようなものが必要とされている」という。「同じナレーションにも、いろんな世界観があるんですね。突き刺さるナレーション、余韻を引くナレーション…。今は『わかりやすく』が求められている。今の作り方って、考えなくてもいい作り方。楽ですよね、でも、一歩下がってみると、考えることもあっていいんじゃないかと。何から何まで説明するんじゃなくて、言葉の奥にある世界を、視聴者の方が自分で考えることができる。そういうナレーションができたならと思います」と言葉に力を込めた。
「来るものは拒まず」の精神で、あらゆる声の仕事をこなしてきた窪田氏。「とにかく、ナレーションが好きでしょうがない。声だけで、世界観を作る。文章を形にして、自分の声で空間に放っていく」と、自らが思う“神髄”を口にした。一方で、その難しさについて「どうしてもテンションが違うという時もある。表現しようとしていることと、求められているものが合致しないことがある、感覚でやっているところがあるからでしょうね」とも語った。
今後、声の世界を目指す若者に対しては、「青臭いんだけど、一生懸命やるしかないんですよ。この世界は、ダメなら次は使われないけど、絶対に諦めないこと。もちろん才能というのはある。もちろん、センスがないとやっていけない。ただ、普通のセンスがあれば、やろうと思えばできるんじゃないかなと」と熱っぽく語った。