中学受験を塾なしで乗り切る場合、どうしても親が勉強を教える機会が増える。親塾とも呼ばれるこのスタイルは、親子の距離が近いぶん上手くいけば効率的だが、一方で失敗談も少なくない。
筆者の家では親塾方式で、2022年に長男(現在高校1年生)が中学受験を終え、現在は小5の次男が受験勉強に取り組んでいる。ただ、長男と次男では性格が違うため、親のかかわり方や勉強の進め方も大きく変えることになった。
そもそも今振り返ってみると、長男は「親塾向き」の子どもだった。素直な性格で、わからないことがあると「これを教えて」と自分から聞いてくる。こちらが説明すれば「なるほど」とすんなり理解してくれた。勉強時間中は一緒に笑ったり雑談したりと和気あいあいと進められたので、親としても教えやすくストレスが少なかった。
一方、次男は完全に自立型。「自分でやる!」という思いが強く、親が口を出そうとするとイライラすることが少なくない。こちらが丁寧に解説しても「わかったわかった」と適当な返事をして、不機嫌になることも。長男に比べると気分屋で、親塾には向いていない性格だと感じている。
次男のこうした性格は、幼いころから変わらない。そこで、親が手取り足取り教えるよりも、自分で学べる環境を整えることを意識した。そのひとつが、「本のある暮らし」をつくることである。
大量の本を購入し、いつでも手に取れるよう家のあちこちに本棚を置いた。図鑑、歴史漫画、伝記といった学習系の本だけでなく、『名探偵コナン』や『鬼滅の刃』など、娯楽としての漫画もたくさん並んでいる。そうした本を次男は気ままに手に取り、時間があると読んでいる。
特に「読まされている」という感覚はなく、ただ楽しく読んでいるうちに自然と知識が身についているように見える。実際、会話の中で「それって、あの本に書いてあったよ」と言って、棚から本を取り出して見せてくれることがよくある。その様子を見ると、「なるほど、ちゃんと頭に残ってるんだな」と感心させられるのだ。
小4になってからは、自分で主体的に学べる通信教材を利用し、動画を視聴しながら学習を進めている。長男はテキストだけを購入し完全に親が教えていたので、全く異なるスタイルだ。
兄弟でもここまで違うのかと、改めて実感する。中学受験となると「通塾か、塾なしで親が教えるか」の二択で語られがちだが、実際はもっとグラデーションがあり、「子どもの性格に合わせて、親も柔軟に方法を選ぶ」ことが何より大事だと感じている。次男のようなタイプは、たとえ通塾していたとしても塾のペースや先生の教え方があわず、学びづらさを感じていたかもしれない。
中学受験は長丁場なので、親子ともにしんどくないやり方を選ぶのが一番だ。そのために「親塾が合うかどうか」は常に注視し、合わないと思ったらすっぱりやめることも選択肢として持っておきたい。
<プロフィール>
野田 茜
2男1女のママライター。2022年、高1長男が完全塾なしで中学受験をし、偏差値(四谷大塚)60半ばの中高一貫校へ進学。現在、小5次男が通信教材を利用し自宅学習で中学受験に挑戦中。自身は中学受験未経験で大学まで公立育ち。中学受験の問題の難易度にまったく歯が立たず、逆に子供に教えられる。「ママ、教えてあげよっか?分かる?」と次男に心配される日々。