ゴールデンウイークは、郷里の祖父母や両親、親戚たちと語らう機会も多いシーズンです。中には、「お墓、どうする?」といったマジメな話題も出るのでは。ちょっと話しづらいけど、いつかは向き合わないといけないテーマ。最近よく聞く「墓じまい」も気になる。だけど、何から始めれば良いのやら…。
少子高齢化や核家族化、墓の承継者不足、維持管理費の負担などから関心の高まっている「墓じまい」。墓から遺骨を取り出し、新たな供養先へ移す「改葬」のことで、いわば〝お墓の引っ越し〟だ。厚労省の衛生行政報告例では、2012年度に7万9749件だった全国の改葬件数は、23年度で16万6886件と、10年余りで2倍以上となっている。
そんな「墓じまい」について、具体的な手順やポイントをまとめた。
まず、何より大事なのは「家族&親族間での話し合い」と「改葬先の選定」だ。この〝2本柱〟がクリアになっていないと後々トラブルになりかねない。代々の墓を手放すことへの合意を親族間でまとめるのは、なかなかの重労働だ。また、改葬先も人気の樹木葬や維持管理を任せられる永代供養墓、アクセス面で便利な納骨堂、自然に返す散骨などさまざま。さらに個人の墓とするか、ほかの人といっしょに供養する合祀(ごうし)にするかなど、選択肢は多岐にわたる。
関西の大手石材業者の担当者は「話し合いは〝やり過ぎ〟と言えるほど重ねてください。後で心変わりしたけど、合祀だったからもう遺骨が取り出せなくなった、というケースもあります。改葬先にご自身や次世代の納骨も考えているのであれば、できればお子さんも交えて話し合いを」とすすめる。
皆で話し合った上で着手するのは「①必要手続きと書類の準備」。現在の墓地管理者(寺や霊園)に墓じまいの意志を伝え、「埋蔵証明書」を発行してもらう。新しい納骨先から「受け入れ証明書」を入手したら、二つの書類を現在の墓がある自治体に提出し、「改葬許可証」をもらう。散骨や手元供養などで新しい納骨先がない場合は、自治体窓口で相談を。
改葬許可証が出たら、「②閉眼供養と遺骨の取り出し」へ。「閉眼供養」は墓の解体前に遺骨を取り出すための供養で、事前に住職への依頼が必要。法要が終わると、「③墓石の撤去と更地化」となる。石材店など専門業者に頼むのが一般的だ。最後に改葬許可証とともに「④新しい改葬先へ納骨」となる。納骨前に開眼法要を営むことが多い。
費用については、改葬先などによってかなり幅がある。必要書類自体はそれぞれ数百円程度、閉眼・開眼供養も3万~5万円が相場とされるが、現在の墓が寺院の場合、檀家(だんか)を離れる「離檀料」を渡すのが通例だ。「離檀料」は義務ではないが、これまでの〝感謝の気持ち〟として包むことが多く、3万~50万円ほどとされる。墓を建てたときの契約書に記されていることもある。
墓石の撤去と更地化は、1㎡あたり10万~15万円とされる。車や重機が入りにくいなど地形的条件などにより費用がかさむ。石材店の選び方は「必ず現地調査をする業者を選ぶこと。同じ霊園でも駐車場横と奥まった所では値段が変わるくらいです。依頼人の口頭や写真の説明だけで見積もり金額を出す業者は、後から追加で高額請求してくることがあるので、その場でお断りした方がいい(前述の担当者)」という。
新しい改葬先への納骨は、「納骨堂」は15万~150万円、「散骨」なら数万~70万円、「樹木葬」で20万~80万円、「永代供養」数万~150万円、「手元供養」数百~70万円程とされる。
元々が小さな墓で離檀料もかからず、遺骨も簡単な入れ物で保管して「手元供養」にするなら総額十数万円程度だが、〝感謝の気持ち〟をたくさん包み、工事も大がかり&改葬先も高価な供養先を選ぶと数百万円に及ぶ。ある程度金銭的に余裕を持って準備することが望ましいだろう。
納得の「墓じまい」をするなら、親族間での話し合いを尽くして改葬先を決めた上で、石材店や葬儀会社など、できるだけ複数の業者から見積もりを取り、希望や費用を相談して手続きを進めたい。