マンションに引っ越して数カ月がたったAさん夫婦には心配事があった。それは、ある日を境に隣の部屋から「ゴン、ゴン」と壁をたたくような音が聞こえることだ。
早朝や夜遅くに加え、夫婦で会話をしている時にも音が聞こえてくる。次第に「こちらの生活を気にしているのでは」と感じるようになり、普段の生活にも気を遣うようになった。
管理会社に相談し、隣人に確認してもらったものの「自分ではない」と否定され、状況は変わらない。警察に相談してもいいのか、Aさんは対応に悩んでいる。
Aさん夫婦のように、近隣住民から騒音や嫌がらせを受けていると感じた場合、どのように対応するのが望ましいのだろうか。若井綜合法律事務所の若井亮さんに話を聞いた。
騒音や嫌がらせが続く場合は、証拠を残して第三者へ相談を
―隣人から嫌がらせを受けていると感じた場合、まず何をすべきでしょうか?
まずは、いつ、どこで、どのような行為があったのかを記録してください。壁をたたく音であれば、発生した日時や時間、どの程度続いたのかなどを記録しておくことが重要です。可能であれば、音声を録音することも有効です。
管理会社や管理組合に相談した場合も、相談した日時や担当者からの回答を記録しておくとよいでしょう。
―騒音や壁をたたく行為は、法的にはどのような問題になりますか?
音の大きさや時間帯、頻度などを総合的に見て、社会生活上、我慢すべき限度を超えている場合には、違法な行為としてみなされます。
民法709条は、故意または過失によって他人の権利や利益を侵害した場合、損害を賠償する責任を定めています。また、精神的な苦痛などの財産以外の損害についても、民法710条により賠償の対象となります。
―管理会社や管理組合、警察には、どのタイミングで相談するのが望ましいでしょうか?
マンションなどの集合住宅であれば、まずは管理会社や管理組合に相談することをおすすめします。その際も、いつ、どのような音が、どのくらい続いているのかを記録した資料を見せると、状況が説明しやすくなります。
怒鳴られる、脅される、身の危険を感じるなど、単なる騒音を超えて危険を感じる場合には、警察へ相談してください。
―相手が嫌がらせを否定した場合、どのように対応すればよいでしょうか?
感情的に相手を問い詰めるのではなく、客観的な証拠を残しておくことが重要です。
ただし、録音・録画をする際には、必要以上に相手の私生活を撮影・録音するなど、プライバシーを侵害しないよう注意が必要です。
―深刻化した場合、民事・刑事のどのような対応が考えられますか?
民事上は、騒音や嫌がらせによって法律上の権利・利益を侵害されたとして、損害賠償の請求や、一定行為の差し止めを求めることができます。ただし、請求が認められるか、また金額がいくらになるかは、騒音の程度や頻度、期間、生活への影響などによって判断されます。
また、壁をたたく、脅すなどの行為が暴行や脅迫などの犯罪に当たる場合、警察に相談し、刑事上の対応を求めることも可能です。
近隣トラブルでは、相手に直接「やめてください」と繰り返し迫ることで、かえってトラブルが激しくなることもあります。証拠を残しながら管理会社や管理組合、警察など第三者に相談するようにしましょう。
◆若井亮(わかい・りょう) 弁護士
早稲田大学第一文学部を卒業後、慶應義塾大学法科大学院を修了。東京弁護士会所属。脅迫や恐喝、強要、ストーカーなどの不当要求への対応を中心に、男女間のトラブルなど幅広い案件を取り扱う。