分譲マンションに住むAさんは、最近、同じフロアの住民Bさんの振る舞いに頭を悩ませている。Bさんは高価なロードバイクをエレベーターに乗せ、自宅まで持ち込んでいるのだが、そのせいでエレベーター内で鉢合わせた際に狭さを感じたり、タイヤの跡で共用廊下が汚れたりしているのだ。
管理人に「規約で禁止されているはずなのに…」と相談しても、注意のみで一向に改善されない。愛好家にとっては「大切な資産」でも、他の住民にとっては「規約違反の迷惑」になりかねないこの問題について、まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。
ー規約で禁止されているにも関わらず持ち込みを続ける住民に対しての対処措置とは?
管理組合は、区分所有法および管理規約に基づき、段階的な措置を取ることが可能です。
まずは理事長名義での「是正勧告」や「警告」を行います。それでも改善されない場合、区分所有法第57条に基づき、共同生活の秩序を乱す行為として、その行為の「差止め」を求める訴訟を提起することができます。
裁判で「規約違反」と認定されれば、判決によって持ち込みを強制的に止めさせることが可能です。ただし、訴訟には時間も費用もかかるため、まずは理事会への出席を求めて弁明の機会を与えたり、是正を強く促したりするのが一般的です。
ー持ち込み時に共用部分を傷つけてしまった場合、修繕費用の請求は可能ですか?
可能です。
故意または過失によって共用部分を損壊させた場合、民法第709条の「不法行為」に基づき、損害賠償を請求できます。タイヤの跡による汚れの清掃費用や、壁の傷の補修費用などが対象となります。
ただし、トラブルを避けるためには「誰が、いつ、どこを傷つけたか」という証拠が必要です。最近のマンションでは防犯カメラの映像が有力な証拠となるケースが多いですね。
ー「高価だから盗難が心配」といった言い分は、規約違反を免れる理由になりますか?
「盗難が心配」というのは所有者の個人的な事情であり、集合住宅のルールである管理規約を優先させる理由にはなりません。また、折りたたみ自転車であっても、規約で「自転車の持ち込み禁止」と明記されていれば、形状に関わらず違反とみなされる可能性が高いでしょう。
ただし、専用のバッグに入れることで「手荷物」として扱われるケースもあります。これは各マンションの規約の解釈や、管理組合の運用ルール次第となります。
ー自転車愛好家がトラブルを避けるために守るべき最低限のマナーとは?
まずは、入居前に管理規約を確認することです。「駐輪場以外への駐輪禁止」だけでなく「エレベーターへの持ち込み禁止」があるかどうかを確認してください。
もし持ち込みが許容されている、あるいは「輪行袋に入れればOK」というルールであれば、「タイヤの汚れを拭き取る、またはカバーをつける」「混雑時のエレベーター利用を避け、他の乗客に譲る」「壁や床に接触させないよう、細心の注意を払う」の3点は守るべきです。
マンションは共同生活の場です。「自分のものだからどう扱おうと勝手だ」という考えではなく、周囲への配慮を忘れないことが、快適な趣味と生活を両立させる唯一の道といえるでしょう。
●北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士
大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。