都内で働く30代女性のAさんは、同じ部署に配属された新入社員のBさんと行動を共にすることが多い。Bさんは仕事を覚えるのが早く、社交的で親しみやすいのだが、独特な体臭だった。
できるだけ意識しないようにしていたものの、Bさんの近くにいることが多く、どうしても気になってしまう。Aさんはこの体臭問題について「本人も気づいていないのでは」と思いながらも、デリケートな問題なのでBさんに直接伝える勇気は持てずにいた。
そんなある日、上司から「ほかの社員たちも気になっているようなので、親しい君から本人に伝えてもらえないか」と相談されたAさん。しかし今後もBさんと接し続けることを考えると、Aさんはこれをかんたんに引き受けることができないでいた。
ではBさんの体臭問題は、誰がどのように伝えるのが望ましいのだろうか。日本ハラスメントリスク管理協会代表理事の金井絵理さんに話を聞いた。
上司や産業医が適切に対応することが大切
ー職場で同僚の体臭が気になった場合、誰が対応するのが望ましいのでしょうか?
会社に産業医がいる場合は、まず産業医に対応を依頼するのが望ましいでしょう。医学的な観点と職場環境両方を踏まえた助言が期待できます。
産業医がいない小規模の会社の場合、上司が対応することになります。
ー上司が同僚に「代わりに伝えてほしい」と頼むことは適切なのでしょうか?
上司が同僚に代理で伝えさせる対応は適切ではありません。従業員が安心して働ける環境を整える「職場環境配慮義務」の観点からも、においなどのデリケートな問題は管理職自らが対応すべき事項です。
プライバシーに最大限配慮したうえで、上司が直接面談を行うようにしましょう。ー本人へ伝える場合、どのような言葉を選べば傷つけにくいでしょうか。
においの種類によって異なります。香水や柔軟剤など、科学的なにおいであれば「人によっても好みが分かれるので控えてほしい」など、業務指令として伝えられます。
一方、体臭や口臭など体から発せられるにおいは、非常にデリケートな問題です。体調や疲労などが関係していることもあるので、体調面を気遣った言葉をかけるのがよいと思います。
ー体臭のようなデリケートな問題で、職場が気を付けるべきことはありますか?
体臭のようなデリケートな問題は、悪口や陰口につながりやすいため、組織として対応することが大切です。会社独自のマナーガイドラインを設けておけば、においだけでなく、音や清潔面など、職場環境を快適にする意識も共有できます。
職場で気になることがあった時も、上司に相談しやすくなるでしょう。
ー本人・周囲・会社、それぞれが働きやすい環境をつくるために大切なことを教えてください。
体臭は入浴や衣類の洗濯などが原因となっていることもあるため、日頃から清潔に気を配ることが大切です。ガイドラインに記載しておけば、各自意識しやすくもなります。
まわりの人たちは、誰かを悪者にするのはやめること。本人だけでなく、指摘しない同僚を責めるのもよくありません。
上司は本人への対応が自分の仕事だと認識するようにしてください。職場を快適にするのも、管理者の役割のひとつです。
◆金井絵理(かない・えり) ハラスメント対策講師
一般社団法人日本ハラスメントリスク管理協会代表理事。企業や自治体などへあらゆるハラスメント対策の研修や講演等を提供する協会を運営。講師や相談員など専門家の養成も行う。