新幹線での旅行に向けて「景色が見たいから」と購入した窓側指定席。しかしいざ当日、新幹線に乗り込むと座るはずの席には見知らぬ客が居座っていた。
チケットを見せて移動を求めても「空いてるんだからいいだろ」「通路側で我慢しろ」と開き直られ、せっかくの旅行が台無しに……。こんな理不尽な状況に遭遇した際、乗客はどのように対応すればいいのだろうか。
指定席の権利を無視して勝手に座り続ける行為は、単なるマナー違反にとどまらない。だからといって無理に排除しようとすると、かえって自分が罰せられるリスクも生じる。そんな指定席にまつわる正しい知識と対処法について、まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。
ー指定席に他人が居座り退かない行為は、何らかの罪になりますか?
指定席券を持たずに他人の席へ居座る行為は、鉄道会社の旅客営業規則(運送契約)に違反します。また、鉄道営業法上の問題(不当な乗車や車内秩序の維持)になり得ます。
直ちに刑法の業務妨害罪や詐欺罪が成立するわけではありませんが、車掌の退去指示を無視して大声で威圧したり、列車運行や乗務員の業務を実際に妨げたりした場合は、業務妨害罪などの刑事罰が検討される可能性もあります。単なるマナー違反にとどまらず、法的・契約上のトラブルに発展しうる行為です。
ー移動に応じない迷惑客を、力づくで退かせることは違法ですか?
どれほど相手が悪くても、力づくで排除する行為は違法となる危険があります。日本の法律では、自らの権利を守るためであっても法的手続きを経ずに実力を行使する「自力救済」が原則禁止されています。
相手の腕を掴んで引きずり出したり無理に押し退けたりすると暴行罪(刑法208条)が、相手に怪我をさせれば傷害罪(刑法204条)が成立し、こちらが加害者になりかねません。感情的に手を出さず、必ず車掌や駅員など乗務員に相談して対応を委ねてください。
ー泣き寝入りして別の席に座った場合、料金の返金請求はできる?
必ず差額が返金されるとは一概に言えません。返金や代替措置の有無は、JR各社の規定や購入したきっぷの種類、状況によって異なります。泣き寝入りせず、乗車中に車掌へ事情を申告し、指示や記録を残してもらうことが第一歩です。
なお、居座った本人に対して民事上の不法行為(損害賠償請求)等を主張することは理論上可能ですが、相手の氏名・住所の特定や損害額の立証、回収の難しさなど現実的なハードルは高いため、まずは現場で乗務員に対応を求めるのが先決です
ー車掌が対応してくれない時、警察に通報・要請することは可能?
通常の座席トラブルは、まず車掌や駅係員に対応を求めるのが原則です。ただし、相手が暴力や脅迫的な態度をとってくる、刃物を所持しているなど、身の危険や緊急性がある場合は迷わず110番通報を行ってください。
緊急時には車両連結部などにある車内非常ボタン(通報装置)で乗務員へ異常を知らせることも可能です。110番通報があれば、状況に応じて警察官が次の停車駅で対応にあたります。まずは安全を最優先にし、状況の危険度に応じて適切に対応してください。
●北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士
大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。