営業職として働くAさんは、初対面の相手と名刺交換をすることが多く「顔と名前がなかなか覚えられない」ことが長年の悩みだった。
そこで、名刺交換の際に「顔を覚えるために写真を撮らせていただいてもよろしいでしょうか」と一言断り、了承を得たうえで相手の写真を撮影することに。名刺と一緒に管理することで顔と名前が一致しやすくなり、安心して仕事に望めるようになった。
しかし、その話を同僚にすると「了承を得ていても失礼では」「自分なら写真を撮られるのは抵抗がある」と否定的な声があがる。それからAさんは「お互いのためになると思っていたけれど、マナー違反だったのだろうか」と考えるようになった。
名刺交換の際、相手の了承を得たうえで写真を撮ることは、マナーとして問題ないのだろうか。ビジネスマナー講師のすぎたはるなさんに話を聞いた。
「了承を得たから大丈夫」とは限らない
ー名刺交換の際に相手の写真を撮ることはビジネスマナーとして問題ありませんか
ビジネスマナーの観点から言うと、名刺交換の場で相手の写真を撮影することはおすすめできません。
名刺交換は、第一印象を決める大切な場面です。そのタイミングで写真撮影をお願いすることは、相手によっては戸惑いや違和感を覚える可能性があります。
ー相手の了承があれば問題ないのでしょうか
初対面の場では、相手は断りにくい状況であることも少なくありません。「顔と名前を覚えるため」という理由であっても、相手に心理的な負担を与えてしまう可能性があります。
了承を得たから問題ない、と考えるのではなく、相手への配慮を優先することが望ましいです。
ー写真撮影に抵抗を感じる人はどのような理由が多いのでしょうか
名刺交換の目的は、まず名刺を交換し、ご挨拶をすることです。
そこへ突然、写真撮影の依頼が加わると、個人情報の取り扱いなどが不安になる方もいます。もちろん快諾してくださる方もいますが、個人情報保護の意識が高まっている現在では、抵抗感を持つ方は少なくありません。
ー顔と名前を覚えるためのおすすめの方法はありますか
昔ながらの方法ではありますが、名刺の余白や管理メモに、相手の特徴や会話の内容、印象に残った出来事などを書き留めておくのがおすすめです。
ちょっとした情報を添えておくだけでも、後から見返した時に記憶がよみがえりやすくなります。
ーデジタル化が進む中、ビジネスマナーも変化していますか
近年はデジタル名刺を導入する企業も増えていますが、日本ではまだ紙の名刺交換が主流です。その理由は、名刺交換そのものが単なる情報交換ではなく、所作や言葉遣いなどを通して、信頼関係を築くきっかけとなるからです。
時代とともに方法は変化しても、「相手を尊重し、気持ちよく関係を築く」という本質は変わりません。その視点を大切にして欲しいですね。
◆すぎたはるな ビジネスマナー講師
愛知万博のアテンダントを経て、トヨタ関連企業を始めとする企業でビジネスマナー講師として活動。現在は、統計学とコーチングを取り入れた婚活カウンセラーとして活動する傍ら、ビジネスマナーや話し方に関する研修・講演も行っている。