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日本で無名だったブルース・リーと出会った映画人の証言「小柄で普通の香港青年」東映アクションへの影響

北村 泰介 北村 泰介
トークイベントで顔を合わせた(左から)尾形敏朗氏、志穂美悦子、福永邦昭氏=都内の目黒シネマ
トークイベントで顔を合わせた(左から)尾形敏朗氏、志穂美悦子、福永邦昭氏=都内の目黒シネマ

 香港のカンフー映画から世界的なスターとなったブルース・リーは1973年7月20日に32歳の若さで急逝した。日本で大ブームとなった74年の時点で、既にこの世にいなかったが、その伝説のカリスマと同じ1940年生まれである東映の元宣伝部長・福永邦昭氏(86)が新刊書籍「実録!東映三角マーク宣伝部」(立東舎)で、無名時代の本人に会ったことを証言した。福永氏に話を聞いた。(文中一部敬称略)

 千葉真一主演で日韓タイ合作の東映映画「東京=ソウル=バンコック 実録麻薬地帯」(73年9月公開、中島貞夫監督)を撮影していた頃の話。タイでのロケ取材に数人のスポーツ紙記者を引率して向かっていたところ、飛行機のエンジントラブルのため4時間ほど香港で時間ができ、福永氏は現地の映画界で活躍していた元キックボクサーの俳優・風間健に会おうと香港の映画会社「ゴールデン・ハーベスト」に赴いた。風間は不在だったが、その場にリーがいたという。

  福永氏は「突然、彼が目の前に現れたんです。実際に会う彼は小柄で、普通の香港の青年でしたよ、それ以前に、香港の路上で売っている雑誌に彼のことが映画スターとして出ていたので、『これは誰だ?』と風間に聞いて李小龍(ブルース・リー)という存在は知っていた。ただ、本物に会うのは初めてでした。ゴールデン・ハーベストのプロデューサーに紹介してもらうと、僕に気を許してくれ、一眼レフのカメラで写真を撮ってもいいかと尋ねると、彼は『どうぞ』と言いながら、前蹴りのポーズまでして撮らせてくれた。握手もしてサインをもらいました。でも日本から同行した記者たちは誰もカメラを向けようとしないんです。まだ日本では誰も知らない頃でしたから」と回顧した。

 ところが、その写真のネガやサインは紛失してしまったという。福永氏は「ブルース・リー狂の(俳優)川谷拓三に『拓ちゃん、サインあるから今度あげるよ」と言ったら、彼は相当、期待してくれていたんだけど、見つからなかった。リーが亡くなった時にスポーツ紙に提供した写真はまた別のもので、僕が撮ったネガは見つからなかった。ちなみに当時のブルース・リー死亡記事は300字ほどの小さなもの。まだ(73年7月時点では)日本での知名度はなかったわけです。それにしても、ネガはどこに行ったのか…?その後も探しましたが、いまだに見つかりません』と残念がった。

 福永氏は出版記念として7月に都内の映画館「目黒シネマ」で開催されたトークイベントで、東映を支えた俳優の一人で現在はフラワーアーティスト、シャンソン歌手として活動する志穂美悦子(70)をゲストに迎えた。「ブルース・リーの映画がなかったら、千葉真一や志穂美悦子の空手映画はなかった」と指摘する福永氏に対し、志穂美も「もちろん」と同意した。

 志穂美は「私が高校3年生の時にブルース・リーが亡くなったんです。まだ(日本では)誰も知らない時で、『ブルース・リーが亡くなった』と聞いても私はピンとこなくて『プレスリーが亡くなった』と聞こえたくらいでした(※ちなみに米ロック歌手、エルヴィス・プレスリーの死去は77年8月)。その後ですよ、(主演映画)『燃えよドラゴン』が世界中を席巻したのは」と振り返った。

 さらに、志穂美は「東映も『燃えよドラゴン』でブルース・リーの妹役をやられたアンジェラ・マオさんを香港から呼んで、日本で女性の空手映画を作ろうということになった。私は『早川絵美』という(主人公を助ける)空手家の女性役をやるはずが、マオさんが来られなくなり、志穂美悦子の主演でということで、『女必殺拳』シリーズ(74~75年)で『李紅竜』という役をいただいたわけです」と説明。19歳にして日本初の本格的なアクション女優としてブレイクした源流は、やはりブルース・リーにあった。

 リーとのエビソードも登場する同書は、学生時代に福永氏の元で映画宣伝のスタッフをした縁のある映画評論家・尾形敏朗氏(71)を聞き手に、波乱万丈の映画人生と共に、「仁義なき戦い」や「トラック野郎」、松田優作、薬師丸ひろ子、原田知世らが主演した角川映画など、携わった作品の舞台裏などが語られている。

 その福永氏は現在、昭和の東映映画を後追い世代が語るYouTube番組「丸の内亭」にも関わる。同番組の監督とパーソナリティを務める天野雄喜氏は29歳という“孫世代”。福永氏は「僕がリタイアしてからはYouTubeとかSNSの時代になりましたが、宣伝のノウハウの基本は一緒だと思います。僕の年齢の3分の1以下である彼(天野氏)の目で映画を語ることで歴史を継続することになる」と手応えをつかんでいた。

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