akiya_b

脳の病気「依存症」と向き合うということ 元TOKIO山口氏の講演を聴いて

悠々〜ライフ

谷光 利昭 谷光 利昭
画像はイメージ(MK studio/stock.adobe.com)
画像はイメージ(MK studio/stock.adobe.com)

 依存症というと様々な言葉が思い浮かんできますが、我々が、もっとも身近に聞く言葉はアルコール依存症ではないでしょうか?

 今回は、そのアルコール依存症を克服中の元TOKIOの山口達也氏の講演会に行く機会がありました。

 一般的に依存症というのは「脳の病気」であること言うことは、あまり知られていません。依存症は、辛抱が足らない、根性がないなどの精神論で片づけられることが多いのですが、これは立派な病気であることを認識して頂きたいのです。

 医学的に簡単に解説をすると、アルコール、薬物などの過剰な刺激により、脳の腹側被蓋野からドーパミンが過剰分泌されます。脳の側坐核という部分が過剰に刺激されて、脳の前頭前野での抑制が効かなくなるという悪循環が繰り返される怖い病気なのです。いわゆる、「わかっちゃいるけどやめられない!」という状況です。その状況が、家族に、社会に迷惑をかけたり、自分自身を死においやることがあるのです。

 依存症とは、慢性疾患であるので生涯、この病気と向き合わなければなりません。糖尿病、高血圧、脂質異常症と同じと考えて頂ければ分かりやすいと思います。しかしながら、この病気は先ほど列記した生活習慣病のように簡単ではありません。糖尿病、高血圧、脂質異常症であれば、数値に基準があり明確な診断、治療が存在します。

 もちろん、依存症にも明確な診断基準があります。

 物質を摂取したいという強い欲望、強迫感。開始、終了、使用量のコントロール不能。離脱症状。耐性を認める。物質使用に変わる楽しみ、興味が減少し、摂取時間、回復時間が延長する。明らかに有害な結果が起きているのに物質使用を続ける。過去1年間に、上記の3つ以上が同時に存在したときに依存症と診断します。

 しかしながら、当人にその話をしても認めないことが多いのです。山口氏のように大きな問題を起こして、初めて他人に助けを求めて診断ののちに治療の開始となることが多いのです。この病気は、一人の力で治すことが出来ません。多くの仲間とともに治療を継続するのです。治癒したと思っても、アルコール、薬物、スマホ、性行為など依存対象を様々なものに変えて存続していく怖い病気です。

 山口氏は自身の体験を通じて、上記の内容同様の話を分かりやすく講演してくださいました。一番心に残ったお話は、講演をすることによって社会にどのようになってほしいとお考えですか?という質問に対しての答えです。「そのようなことは考えていません。私はこの講演をすることによって、今日1日酒を断つことができたという思いです」と丁寧にお話をされました。断酒をして5年が経った今も、毎日病気と向き合っている山口氏の真摯な態度に非常に感銘を受けました。

よろず〜の求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース