米国発のトレーディングカードゲームとして話題になった「イルミナティカード」。絶版となっていたが、日本語訳の復刻版が「イルミナティ ニューワールドオーダー」と題して、飛鳥新社から7日に発売される。大人の知的好奇心を満たすゲームとして楽しめる一方、 「9・11米国同時多発テロ」などの大事件を予言したカードとして、発売から30年を経た今も都市伝説ファンの関心を集めている。マニアの心理をくすぐる要因について、ジャーナリストの深月ユリア氏が識者に見解を聞いた。
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1994年に米国で発売され絶版となっていた「(通称)イルミナティカード」が、版元の米・スティーブジャクソンゲームズ社から翻訳権を獲得し、日本語版が発売される。
「イルミナティ」という「世界支配を企み、悪魔を崇拝する闇の組織」が存在するという都市伝説に基づいたゲーム。プレイヤーは9種類のカードから一つを選択し、「世界支配のための権力構造を発展・強化させ、社会を操りながら、敵対勢力に終末的な打撃を与え、ニューワールドオーダー(新世界秩序)を構築していく」という設定でゲームを進める。そのカードには「イルミナティの世界支配計画を予言しているのではないか」という説がある。
例えば「テロリストからの核攻撃」というツインタワーのような建物がテロリストに攻撃されるガードがあり、このタワーがワールドトレードセンターに似ていることから「9・11米国同時多発テロ」を予言したのではないかという説や、「悪魔の疫病」というカードにはコウモリが描かれていたことから、その発生源とされた説をもって「新型コロナウイルスを予言した」という説もあった。
都市伝説に詳しい作家の山口敏太郎氏は「あくまでゲームの一種でしょう。人間の歴史は繰り返します。疫病の流行、テロ、戦争など、そのような再び訪れそうな事象に関する抽象的なカードを都市伝説や陰謀論好きなユーザーが、後付けで『イルミナティの世界支配計画を予言したカード』と解釈しているのではないでしょうか。カードを作る側も、それを分かっていて、陰謀論・都市伝説が好きな人たちを対象としているのでしょう」と指摘した。
心理学者の富田隆氏は「イルミナティカードに描かれた絵には、どのようにも解釈できる『あいまい』な部分が含まれ、それがどういうシーンなのか自由に物語を語るように求められます。その絵柄から戦争や大災害などのカタストロフィ(※破滅)を連想したり、カードの登場人物が有名な政治家に似ていると感じたりするのは、見た人の深層心理に潜む『恐怖』や『不安』『怒り』などのネガティブな感情や衝動が『投影』された結果なのです」と説明した。
一部には、同カードを「予言」として世の中に広める人もいる。その動機について、富田氏は「『狼少年』と同様の『愉快犯』的な心理が隠されているのではないでしょうか。つまり、『第三次世界大戦』や『小惑星の衝突』といった誰もが恐れるようなカタストロフィが来ると宣伝して回れば、世の中は大騒ぎになり、『狼少年』的な性格の人にとっては『自己承認欲求』を満たす愉快な体験です。そして、そうした『予言』の出所は全てイルミナティという謎の組織ということになっていますから、自分はそれを『解読』しただけである、というように『責任転嫁』が容易です」と解説した。
ファン待望の日本版発売が近付いてきた。新たな都市伝説が流布するのだろうか。