NHK大河ドラマ「光る君へ」第30回は「つながる言の葉」。和泉式部(泉里香)が登場しました。和泉式部は、平安時代中期の女流歌人であり、大江雅致(越前守)の娘として生を受けます。母は平保衡(越中守)の娘でした。和泉式部は劇中では「あかね」という名でしたが、本名は不明です。これは、紫式部と同じと言えるでしょう。
紫式部は、和泉式部のことをその日記(『紫式部日記』)に次のように記しています。「和泉式部という人は、趣きのある手紙を書いた人です」と。また和泉式部の歌を「大層、面白いもの」と評価しています。
とはいえ、手放しで賞賛している訳ではなく、古い歌や歌論には精通していないという、(紫式部が感じる)和泉式部の「欠点」も記されているのです。和泉式部には前述したような欠点があるのに、他人の詠んだ歌を批評しているのを見ると「それ程、歌の道を心得ている訳でもないのに」と紫式部は感じたと言います。「尊敬すべき歌人ではない」と紫式部は和泉式部のことを非難します。それは前に述べたような理由もあるでしょうが、和泉式部の素行も関係しているように思います。
紫式部は、和泉式部のことを「奔放な一面がある」と書いていますが、和泉式部は恋多き女性としても有名です。橘道貞(和泉守)という夫がいながら、為尊親王(冷泉天皇の皇子)と恋愛したり、為尊親王の死後は、その弟・敦道親王から求愛されたり、藤原保昌(藤原道長の家司)と再婚したり…とにかく恋に生きた女性と言えるでしょうか。
和泉式部は、紫式部と同じように、藤原道長の娘・彰子に女房として仕えます。道長は、和泉式部のことを「浮かれ女」(浮気な女)と評したとされますが、紫式部もおそらく、同じように思っていたのでしょう。