国際プロレスのエースで、アントニオ猪木さんとの歴史的名勝負で知られるストロング小林さん(享年81)が2021年の大みそかに亡くなって2年になる。その偉業を回顧する「ストロング小林展」が15日、故郷の東京・青梅市で開幕した。その中には、56年前に日本人初のマスクマン「覆面太郎」としてデビューした当時のマスクも含まれている。縁のある「西口プロレス」のアントニオ小猪木(52)が初日に会場を訪れ、小林さんへの思いを語った。
昭和プロレス史に大きな足跡を残したレジェンドの遺品が、青梅市の西友・河辺店4階のボッパルトホールで無料公開されている。90点以上の写真、米メジャー団体「WWWF」(現WWE)世界ヘビー級王者ブルーノ・サンマルチノに挑戦した際のコスチュームをはじめ、試合で着用したガウンやタイツ、国内外での複数のパンフレット、ポスター、等身大パネルなどを19日まで(午前10時-午後6時、最終日は午後5時まで)展示する。
中でも注目は「奇跡的に小林家で発見された日本人第1号覆面太郎マスク」だ。主催する「ストロング小林展実行委員会」の持田一博氏は、よろずニュースの取材に対して「小学生の頃からファンで、中学1年の時に小林さんと知り合い、ご自宅にもうかがったのですが、(40年以上にわたる交流の中でも)マスクは見たことがなかったです。『ある』とは聞いていましたが、こちらから聞くこともできずにいました。それが今回、ご遺族のご厚意によって初めてご提供いただきました」と説明する。
マスクの着用期間は1967年7月27日の覆面太郎デビューから、素顔になった翌年1月3日までの5か月余り。両サイドが黒で、頭頂部が白地に赤の日の丸デザインだった。さらに、青が基調で同デザインの覆面も合わせて展示。持田氏は「青の方はおそらくスペアで、実際に試合でかぶることはなかったようです」と解説した。
会場では、国際プロレスでのラッシャー木村戦、モンスター・ロシモフ(後のアンドレ・ザ・ジャイアント)戦、ドン・レオ・ジョナサン戦、新日本の坂口征二戦、「昭和の巌流島」と称された猪木戦など伝説の試合映像を上映。小林さんは74年3月に東京・蔵前国技館で猪木さんのNWF世界ヘビー級王座に挑み、「怒濤(どとう)の怪力」と称されたパワーファイトで苦しめた末に敗れた。再戦、再々戦でも敗れたが、大物日本人対決による昭和の名勝負は今なお語り継がれている。今回は、昨年10月に79歳で亡くなった猪木さんの〝代理〟として小猪木が登場した。
小猪木は猪木さんからお墨付きを得た形態模写を会場で生披露。「僕は後追い世代になりますが、ビデオで試合を拝見してきました。小林さんは国際プロレスの絶対的エースであり、海外でも活躍した日本人レスラー。IWA世界ヘビー級王座の連続防衛記録(25回)など、強さと共に記録も残した。若い頃は猪木さんと似た風貌でしたが、『柔の猪木』に対して『剛の小林』というイメージでした。今回は、小林さんに対して猪木さんが放った右ストレートのシーンのモノマネをやりました」。さらに、小林さんお手製のダンベルで使用されたコンクリートのブロックを持ち上げるなど.その歴史を体感した。
また、秘蔵マスクにも見入った。小猪木は「覆面太郎は知ってましたが、どこか古いイメージが強く、カッコいいと思ったことはなかったのですが、改めて小林さんの生い立ちや苦労などを知ると、逆に色気を感じ、カッコよく見えてきました。覆面太郎時代の写真もホリの深い目元の顔立ちや肉体の筋骨隆々さも似合っていて、ホントにカッコよく思いました。覆面太郎をリアルタイムで見たかったです」と感想を語った。
小林さんは84年に現役引退し、「ストロング金剛」の芸名で数々の映画やテレビドラマ、バラエティー番組に出演。会場ではTBS系「風雲!たけし城」など出演番組を編集した映像も流されている。持田氏は「ファンの方が興味を持っていただけるものを出し惜しみなく展示していますので、小林さんの功績を知っていただきたいです」と呼びかけた。
小猪木は「10年以上前に知人を通して青梅のご自宅で小林さんにお会いしました。僕の存在を知っておられて『応援していますよ』と声を掛けてくださり、とてもうれしかった。僕の20周年の時にもお祝いコメントをいただいた。本当に優しい人でした。亡くなられましたが、こうして恩返しできてうれしいです!」と人生の大先輩に感謝した。