武豊も絶賛した明石のタコ天 園田競馬場で50年以上愛される本場の味は1本200円【勝負メシ5】

中江 寿 中江 寿
1番人気のタコ天
1番人気のタコ天

 ギャンブル場での楽しみのひとつに「グルメ」がある。予想が当たってもうかれば味も一層おいしく感じられ、負けが込んでいてもパワー補充でいただく。各場に名物があり、それぞれ個人的にお目当ての一品もあることだろう。「よろず~ニュース」では、全国の公営レース場から、そんな『勝負メシ』を紹介していく。

 兵庫県の園田競馬場にある「明石屋」は天ぷらがメインの飲食店。ネタは18種類ほどあるが、その中でも1番人気なのが「タコ天」だ。注文を受けてから、3種類の調味料が入った秘伝の衣を付けて揚げるので、熱々を味わえる。

 さっそく、食べてみた。衣はサクサクで、しっかりとした味付け。それでいて重さはなく、何本でもいけそうだ。これでビールがあったら最高だが、取材中だったので我慢。物価高騰のあおりをうけて、昨年初めごろに値上げをしたが、それでも一本200円(税込み)ならお得だろう。以前、某番組の収録で競馬場を訪れた中央競馬の武豊騎手が「おいしそうなニオイがしたから」と店に来てタコ天を食べ、その味に大いに満足したらしいが、それも納得できる。

 1950年代に競馬場近くにあった民家の軒下を借りてスタートし、69年に競馬場内に移った。経営する斉藤恵美子さん(72)は、5年前に90歳で亡くなった先代の母を手伝うため、30年前から店に入っている。

 下ごしらえは明石市内の自宅で行う。本場・明石の地元業者から仕入れたタコを、しょうゆ、みりん、砂糖が入った鍋でじっくりと炊いて味を染み込ませる。それを食べやすいサイズに切り分け串に3、4個ずつ差して完了。タコの串だけで1日最低60本、ゴールデンウイークや年末年始、ビッグレースがあるときは、300本以上仕込むことも。

 かき入れ時には仕込みだけで徹夜になることもあるという。自宅から園田競馬場までは電車を乗り継ぐなどして片道1時間30分。斉藤さんは「休みたいけど、お客さんが来てくれるし、頑張っています」と笑う。

 これまでに1日でタコ天が売れた最多本数は1500本。2008年にダート最高峰のレース「JBC競走」が開催された時だった。現在でも平日で30~40本、ナイター開催で80本、多いときには100本を超える。揚げたてを提供するため、味を求める客が長蛇の列を作ることもある。

 この味は姫路競馬場でも堪能することが可能だ。姫路競馬本場の開催日とWINS姫路としてJRAの場外発売を行う土日は営業している。「体が元気な限りは続けたいですね」と斉藤さん。母から受け継いだ本場の味を是非一度、ご賞味あれ。

 ◆園田競馬場兵庫県尼崎市田能2―1―1 阪急園田駅、阪神尼崎駅、JR尼崎駅から無料送迎バスが運行。※阪神、JR尼崎駅は園田競馬開催時のみ。

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