愛されて70年 タコなし「多幸焼」の秘伝の具材とは 1皿100円ボートレース尼崎名物【勝負メシ4】

中江 寿 中江 寿
尼崎ボート名物・多幸焼
尼崎ボート名物・多幸焼

 愛され続けて70年のロングセラー。兵庫県・尼崎市の「ボートレース尼崎」に1952年のオープン当初から、ずっと親しまれている味がある。見た目は「たこ焼き」でも、タコが入っていない「多幸焼」。6個入りで1皿100円(税込)と破格の安さで販売している。

 尼崎市がボートレース場を運営するにあたり、地元・大庄東婦人会に声がかかった。5代目の廣瀬かつみ会長(80)によると、当初は冷蔵の設備がなくタコを使用するには衛生面で不安があることから、味付けして煮詰めたコンニャクと桜エビを入れることにした。「ボートは6艇だから6個に。幸せを多くということで〝多幸焼〟」と笑う。

 だしや生地の調合、コンニャクの味付け、しょうゆとソースの2種類の味など、脈々と受け継がれている。「タマゴもいっぱい入れますし、いろいろと考えています。企業秘密ということで」と話す。店の前には絶え間なく人が訪れ、人気のほどがうかがえる。1日で平均1000~2000皿が売れる。大きいレースが開催されるとなれば、長蛇の列ができることもしばしば。また、東京に転勤した人が、懐かしさを求めて訪れるなど、長年通い続けるファンも多い。

 実際に食べてみた。見た目はシンプルだが、外はカリッとして中はフワッとしてトロッとした食感。油断すると口の中がやけどしそうになるほど熱々だ。明石焼に似た感じか。飽きの来ない味で、いくつでも食べられそう。毎日にように来る人がいるのもうなずける。物価高の影響で値上げも検討されるが、続けられる限りは、100円の値段を維持していくつもりだ。

 収益の中から家賃、人件費、材料費などを差し引いた分は、婦人会主催の地域イベントや神社、老人会、消防団など助成金や、小学生の入学祝いなどに役立てている。「若い人に引き継いで行きたいですね」と廣瀬会長。ロングセラーの味と地域に貢献する精神は守り続けられる。

 ◆ボートレース尼崎 兵庫県尼崎市水明町199-1。阪神尼崎センタープル前駅から徒歩3分。JR立花駅、阪急塚口駅から無料送迎バスが運行をしている。

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