神社といえば、厳かで敷居が高く、初詣や観光などの機会でないと気軽に行かれないイメージがないだろうか。30代の筆者も神社に疎く、敬遠してしまっているうちの1人である。ただ、せっかく日本に住んでいる以上、神社というものを詳しく知り、日頃から参拝したいような気もする。
そこで、今回は神社にまつわる基礎知識を学ぶべく、兵庫県尼崎市に鎮座する貴布禰神社(きふねじんじゃ)の宮司、江田政亮(えだ・まさすけ)さんに話を聞いた。
ーーご利益(ごりやく)って何ですか?
江田:ご利益は、神様を信じることで受ける恵みなどです。八百万(やおよろず)の神様が全国にいて、守ってくれています。
ちなみに、日本の神様は非常に柔軟で、ご利益も時代と共に変わっています。例えば、天満宮は学問の神様として有名ですが、元は都で流行った病を退散するために建立されました。近くに西宮戎(にしのみやえびす)という神社がありますが、元は大漁の神様でしたが、現在では職種を問わず様々な企業の人が新年早々の十日えびすで、商売繁盛を願うことで有名です。当社も、雨や水を司る神様を祭っていますが、尼崎市の産業発展に伴い、安全なども祈願する神社となっています。
ーーお願い事ってしてもいいのですか?
江田:してもいいですが、お礼が大事です。例えばご高齢の方だと当たり前に知っている方が多く、「ありがとう」だけを何度も唱えて帰られる方も多いですね。私たちが神様に言葉を伝える祝詞(のりと)も、まずはお礼から始まります。
ーー神社はコンビニより多いと聞きました。本当ですか?
江田:全国に神社はたくさんあります。もともと村ごとの寄り合いの場から始まっている為です。また、兵庫県は全国的に見ても多い方(兵庫県神社庁によると、3835社)です。ただ、年々なり手が減っていて問題になっています。
ーー宮司と神職(神主)はどう違いますか?
江田:宮司や禰宜(ねぎ)などは役職になります。一般的な会社に例えると、宮司は社長ですから、1つの神社に宮司は1人となります。一方で神職(神主)は職業名となります。神社に仕えること、イコール神職です。
ーー神職には誰でもなれるのですか?
江田:神道に理解があり、神社本庁が定めた勉強を行い、資格を取れば誰でもなれます。東京の國學院大學か伊勢市の皇學館大学を出るのが一般的ですが、神職養成機関に通う方法などもあります。神社庁長や地域の神社の宮司の推薦が必要な場合もあります。
ーー氏子(うじこ)、総代(そうだい)って何ですか?
江田:神社にはそれぞれ担当している地域があります。そこに住む人々を氏子といい、その中の代表を総代といいます。当社の場合は、町会から選ばれます。かつて、総代は地域における一種のステータスとなっていましたが、現代においてはあまり知られていないかもしれませんね。ちなみに現在当社は15人ほどの総代にお世話になっています。また、宮司が常駐していない神社を兼務神社といい、総代のみで管理している所も多いです。
ーー神事に数珠は要らないというのは本当ですか?
江田:不要ですが、お参りをされる方の信仰のあり方があるので禁止という訳ではないと思います。
ーー若者は神社にいるイメージがあまりないのですが、どうしてでしょうか?
江田:歴史において、神社は人が集まるところにできています。それなのに人が減ってしまった理由の1つに、神社の役割が公民館など公の施設に移った事があると思います。危機感を感じず、若い人に来てもらうことを怠り、ノウハウが無いまま長い時間が経ってしまった為、人を呼ぶことができない神社が増えているのかもしれません。
神社は、誰でもいつでも訪れることができます。入会したり、予約したりする必要がありません。諸説ありますが、社会という言葉は“社(やしろ)で会う”から来ているそうです。世代を問わず様々な方に来て欲しいですし、神社の側にも工夫が必要だと思います。当社では10年ほど前から様々なイベントを行ってきました。若い世代を含めて社会の寄り合いの場になるよう、仕組みづくりをしていけたらと思っています。是非、問い合わせをしてほしいです。
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「神社のことを知ることができたら」そんな気持ちで敢行したインタビューだったが、予想外に熱い想いに触れることができた。神社は単なる宗教を超え、長年、日本人の心のよりどころとなってきた施設。再び認知が高まり、人々の寄り合いの場として活性化してほしいと思う。
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貴布禰神社
住所:〒660-0874 兵庫県尼崎市西本町6丁目246
電話番号:06-6411-0170
ホームぺージ:https://kifunesan.jp/