落語家の笑福亭智丸(34)が主催する落語会「爆裂繁昌亭」(4月7日、大阪・天満天神繁昌亭)が危険な香りを漂わせている。上方落語の定席に、お笑いコンビ・ななまがり、オダウエダを招き開催される予測不能な落語会。出演者をつなぐのは、同じ大学の落研出身者だということ。智丸に落研時代の思い出や、公演にかける思いを聞いた。
2013年入門の智丸にとっては、これが繁昌亭で行う初の主催公演。「ずっと前から実現させたい寄席だった」と明かし、落語家の門をたたいてから10年での実現に喜びをにじませた。
智丸、ななまがり・森下直人(36)と初瀬悠太(36)、オダウエダ・植田紫帆(31)の4人は大阪芸術大学「落語研究寄席の会」出身。ななまがりはキングオブコント2016で決勝進出、オダウエダは女芸人No.1決定戦「THE W 2021」で優勝の実力者で、ともに強烈な世界観をもつ型破りなコント師。同落研は、その他にもM-1グランプリ2019王者・ミルクボーイや、キングオブコント2021王者・空気階段の鈴木もぐら(35)など、ネタを評価される人気芸人を数多く輩出している。
智丸と同落研との出会いは、高校生のころ。大芸大への進学を希望し学園祭を訪れた際、現在と同じコンビ名でネタを披露するミルクボーイ、ななまがりに魅了されたという。「ミルクボーイさんは今の漫才の型が既に出来上がっていて、ななまがりさんも独自の世界観が既にあって」と回想。導かれるように進学、そして落研に入部した。
入部後、特に影響を受けたのが、2学年上の先輩だったななまがりの2人。「お笑いへの情熱や魂が他の人とは違った。部室とかでもローテンションでずっとぶつぶつ面白いことを言ってたり、突然コントが始まったり」と当時の衝撃を振り返った。
「面白くない奴は追い出されるみたいな空気感があった」と智丸が回想した当時の同落研は、他大学の落研とはあえて深い交流をもたない「鎖国政策」をとり、独自の発展を遂げた、まさに落研界の“ガラパゴス”状態。異形の文化は脈々と受け継がれ、ななまがり、オダウエダといった型破りなコント師を形成。智丸は新作落語のほか、詩人としての顔も併せ持つなど、マルチな才能で活躍の幅を広げている。
憧れのななまがりとは、今回が念願の初共演。オダウエダも加えて、お笑いライブだとしても色濃い部類のメンバーがそろった。智丸が落語2席、各コンビがコントを2本ずつで、トークコーナーも挟む予定。「深夜ラジオが好きな人が集うようなディープな企画。深夜のお笑いを午後7時(開演時間)からお届けします」と呼びかけた。
目指すは、繁昌亭の新規ファン開拓。普段、繁昌亭に縁遠い層が足を運ぶことを期待している。「東京に比べて、大阪は落語ファンが少ないとよく言われるが、お笑いファンは多いはず。ディープなお笑いファンが少しでも落語に気を向けるきっかけになれば」と期待を寄せた。