藤井聡太五冠(竜王・王位・叡王・棋聖、王将の五冠)が羽生善治九段の挑戦を受ける将棋の第72期王将戦七番勝負第4局2日目が10日、東京都立川市の「SORANO HOTEL」で指し継がれ、藤井九段は107手で完敗。対戦成績を2勝2敗のタイに戻された。
藤井王将は第2、第4局とともに後手番で敗れ、今月1日のA級順位戦8回戦・永瀬拓矢王座戦を挟んで後手番で3連敗となった。今年度は先手番でわずか1敗と圧倒的な強さを誇る一方で、後手番では過去にないほどの低勝率となっている。
今局を終え、藤井五冠の通算成績308勝62敗で勝率・832。うち後手番では150勝42敗で・781となっている。だが今年度に限ると、後手番は16勝9敗で勝率・640だ。21年度は22勝9敗で・710、20年度は20勝2敗で・909、19年度は26勝8敗で・765、18年度は29勝6敗で・828、17年度は33勝8敗で・805、16年度は4戦全勝だっただけに、7割を大きく下回るのは、最強ロードをひた走る藤井五冠とすれば〝異常事態〟だ。
プロ棋士の先後勝率は、先手が約52~3%とされている。もっとも藤井五冠は、第1局の振り駒以外は手番が決まっているタイトル戦を多く戦っているだけに、研究の結果によって先手有利が加速する部分はあるのかもしれない。羽生九段はかつて、手番の有利不利について「先手必勝。でも『打ち歩詰め』があるから互角」という旨の発言をしたことで知られているが、その結論が出たという話は聞かない。AIの発展で将棋界が大きく変化している中、藤井王将が見せる「偏り」が意味することとは?一過性、偶然、それとも…。八冠独占すら〝目前〟とも思える藤井五冠に訪れた試練に、今後も注目したい。