限界集落にある寺「健在だった頃」を写真集に 海外からなぜか大反響!アマゾン1位も

実家にある鐘つき堂(写真集より)
実家にある鐘つき堂(写真集より)

 神戸市在住の河野裕美さん(58)が、このほど、全編スマートフォンで撮った写真の電子写真集を出版した。「限界集落」にある実家の寺に活気があった頃の写真をまとめた作品は、アメリカなど海外でも読まれている。

 電子書籍のタイトルは「Nostalgic Scenery of Japan(日本の原風景)」。香川県木田郡三木町にある寺で育った河野さんは、幼い頃の思い出が詰まった実家や周辺の自然を3~4年前から写真に収めていた。55ページの電子書籍に、手作りの丸餅や寺の鐘つき堂、火鉢など生活の一コマを記録した。

 高松市から電車で30分、車で30分の山中にある実家の寺は、住職だった祖父と祖母が亡くなりすでに解散している。寺を借りていた知人も昨年に退去し、今は空き家状態で雑草が生えている。河野さんは「人が住まなくなったらすぐ廃虚みたいになってしまう。限界集落で(まるで)『ポツンと一軒家』。住む方もいなくなって、周りのみなさんがどんどん亡くなって寂しい思いをしていたので、以前に撮った健在だった頃のお寺の写真をなんとか残したいと思った」と、撮りためていた写真の電子書籍化を決めた。

 英語のタイトルをつけ、海外向けに出版。アメリカ版AmazonのKindle電子書籍売れ筋ランキングTravel Photography部門では一時、1位になったこともある。河野さんは「残したいという思いで自分のために出したら、たまたまいろいろな国の人が見てくれているんだと分かってうれしかった」と驚き、「有名なお寺はプロの写真家さんが撮って出版されている。旅行でよく訪れる観光地ではなく、田舎に住んでいる普通の日本の生活を海外の方に知っていただけたら」と期待した。

 河野さんは約2年前まで、裁判の記録書類などを作成する裁判所書記官として香川県や兵庫県内の裁判所に34年間勤めた。香川に住む認知症の母の介護と仕事の両立が難しく、2020年に退職した。

 現在は月に2回、神戸から往復10時間をかけて母の元へ通い、「私のことを分かるうちに」と親子の時間を大切にしている。祖父母が大切にした寺を維持できなかったと悔やむ母の姿を見ていた河野さんは、「(写真集を)母が見て、写真に残っているということをすごく喜んでもらいました」と親孝行を喜んだ。

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