単に本を売るだけではなく、印刷・製本・出荷までひっくるめて一括で代行……。Amazonによるそんなサービスが、ツイッター上で話題となっている。
サービスの体験者によると、Amazonで超マイナーな洋書を買ったところ、爆速で届いたという。海外から空輸されたものと思ったものの、最後のページを見たらそこには「Printed in Japan」の文字が。
実はこの本はAmazonが展開するPrint on Demand(POD)というサービスで作られたもの。マイナーな本の在庫を抱えず、しかも注文があった際には迅速に届けられるよう、注文に応じてデジタルデータをAmazon市川倉庫の製本所で印刷・加工。そのまま顧客に届けるサービスだという。
印刷は多少粗いものの、在庫切れもなく絶版の恐れもなく、マイナーな書籍を注文に応じて届けることができる。そんなサービスに対してツイッターでは
「流石のクオリティですね!
凄いの一言!!」
「『本は印刷したものを配送する』という概念を捨てて、どうしたら早く届けられるかを追求してたんですね😳😳😳Amazonすごい✨✨✨」
「Amazon凄すぎますね・・・初めて知りました。」
などの声が寄せられている。
実際のところ、このPODというサービスはどのようなものなのか、アマゾンジャパン合同会社に聞いてみた
──PODのサービスは、いつ頃から開始しているものでしょうか?
アマゾンジャパン:日本では、2011年4月より提供を開始しました。
──主にどのような書籍に関して行なっているサービスですか?
アマゾンジャパン:商業出版で流通しているものから個人の著者による書籍まで幅広いジャンルの書籍に対応し、入手が困難な書籍や、過去の書籍、や海外で販売されている書籍など、お客様のニーズに合わせた書籍を注文ごとに一冊から印刷、提供することができます。
──PODの強みはどのような点にありますか?
アマゾンジャパン:Amazonでは、プリント・オン・デマンド(POD)で書籍を1冊からご提供しており、プログラムが適用された書籍は常に出荷可能な「在庫あり」の状態になります。
絶版本や希少本、特注本、外国語や大活字版など、従来は比較的コストがかかっていた商品でも、国内のお客様に低コストで提供しており、出版社は売れる部数を予測して大量の部数を印刷するリスクと、在庫を保管する費用ならびに返品のリスクを軽減できます。
海外の出版物においても、日本への輸送費、日本国内における在庫を抱える費用やリスクを削減して、日本で販売することができます。
このように、従来の書籍ビジネスにおけるコストやリスクを軽減して、少量多品種の出版が可能になったことで、作品の多様性が生まれ、読者の皆さまは多様な選択肢の中から、常に作品を手に入れることができます。
──ツイート内でも迅速な製本・配送について言及がありますが、これについてはどのような技術で実現しているのでしょうか?
アマゾンジャパン:国内外の出版社あるいは個人著者の方が予め本のデータをPODに登録して出版していただくことで、世界のAmazonサイトで本を販売することが可能です。
予め登録された本のデータをもとに、オンデマンド印刷技術で注文ごとに1冊ずつ印刷し、Amazon.co.jpの配送の仕組みを通して全国に出荷しています。
──PODサービスの今後の見通しについて教えてください
アマゾンジャパン:将来的なことについてはお答えいたしかねますが、Amazonでは1994年に書店としての創業以来、出版ビジネスに注力しております。
2021年10月より、個人著者の皆さまがKindleストアに本を出版することができるサービス「Kindle ダイレクト・パブリッシング(以下、KDP)」においても、ペーパーバック(紙書籍)での出版サービスを開始いたしました。
これにより、著者の皆さまは電子書籍に加えて紙書籍での出版も選択可能になり、より多くの読者に作品をお届けできるようになりました。
また、読者の皆さまはより多くの選択肢からライフスタイルやニーズに合わせて電子形式もしくは紙形式を選び、著者の作品をお楽しみいただけます。
KDPでは、マンガを含むすべてのジャンルの電子書籍と紙書籍を、初期費用なしでセルフ出版でき、著者の皆さまは販売価格をご自身で設定し、紙書籍で60%、電子書籍で最大70%のロイヤリティ*を受け取ることができます。
KDPの紙書籍出版においても、注文に応じて印刷を行うため、著者の皆さまが在庫を抱える必要がありません。
今後も多様な素晴らしい作品を通じて、著者と読者の皆さまが出会う機会が増えることを期待しています。お客さまに更なる利便性を提供するため、今後も様々な可能性を検討してまいります。
(※紙書籍の場合、ロイヤリティから印刷費が差し引かれる)
◇ ◇
既存の出版・印刷システムの抱える悩みを、合理的に解決したサービスと言えるPOD。Kindleとの連携も含め、こうした新たな取り組みはさらに広がっていきそうだ。