SNS界隈で度々、注目を集めるコンテンツに“レトロ”というテーマがある。昭和のとある時代を象徴するファッションや漫画、テレビ番組のパロディまで、“ちょいダサ感”まで忠実に再現された表現は、当時を知る世代にとっては懐かしく、若者世代になっては新鮮なコンテンツとして話題を呼んでいる。
“ネオレトロブーム”とも言えるそれらのコンテンツの代表作として、一時期SNSを席巻していたのが、Netflixの架空CM。イラストレーションや映像の質感は、1970年代をイメージして作られており、「本当にあの時代にNetflixがあったんじゃないか」と錯覚するほどの出来栄えで、Twitterで発表されると6万回再生に迫るほどの人気ぶりだった。
今回はこうしたレトロ映像や漫画を仕掛ける、映像クリエイター、ライターとして活躍する、かねひさ和哉さん(@kane_hisa)に、その創作方法や今後の展望について話を聞いた。
昭和らしい“ノイズ”や“演出”を再現する
数々の昭和風レトロ作品を手掛ける、かねひささんの年齢は何とまだ21歳。高校時代からアニメーションの歴史や表現ついて調査し、現在は大学にて映画やメディア全般に関する研究を行っているという。平成生まれのかねひささんが、昭和やレトロに興味を寄せた理由は何だったのだろうか。
「もともと、昭和30〜40年代の公共啓発CMはじめ、ローカルCMや同時代のコマーシャルソングが好きだったんですよ。あるとき、アニメーション研究のかたわらで“息抜き”のつもりで、『こういう演出をすれば昔っぽくなる』というポイントを詰め込んだ動画を作ったのが始まりでした。あまり意識的に“レトロ調”っぽくしちゃうと、ある種の“あざとさ”が生じてしまいます。なので、当時らしい映像のノイズ感や演出を模索しながら制作していますね」と、かねひささん。
あまりにも高い再現性から、昭和当時と同じ手法で制作しているのかと質問すると、「さすがにアナログ時代のようにセル画と生フィルムは使っていませんが(笑)、根本的な作業過程は実際に一枚一枚原画をペンタブレットで描き、動画編集ソフトで撮影するというシンプルな工程です。それをAfter Effectsというソフトでフィルム風、またはVHS風に加工し、当時らしい映像になるように仕上げています」と、創作方法を丁寧に教えてくれた。
Netflixの架空CM以降、複数の企業よりPR動画の依頼などが相次いでいると話す、かねひささんは、すでに次に一手を見据えているそうだ。「CMとなると動画の構成がワンパターンになりがちですので、いずれミュージックビデオや短編アニメーションのような枠組みで、より刺激的な映像が作れるようになりたいなと思っています。もちろん、昭和風動画クリエイターとして話題になったことは大変嬉しい出来事でしたが、私個人としては“昭和風”に留まらない、さまざまな作品や研究を今後も精力的に続けていきたいと考えています」と、今後の展望を教えてくれた。次は、どのような表現で驚かせてくれるのだろうか。注目していきたい。
■■かねひさ和哉さんInformation
▶Twitter /
https://onl.tw/b6kgvc5
▶You Tube /
https://onl.tw/tHbwkWU