ウルトラマン初代ヒロイン桜井浩子「後世に残すため」秘話満載の写真集、自伝を連続発売

山本 鋼平 山本 鋼平
写真集を発売した桜井浩子=千葉県内
写真集を発売した桜井浩子=千葉県内

 女優の桜井浩子が24日、千葉県内で開催された世界最大の造形・フィギュアの祭典「ワンダーフェスティバル(ワンフェス)2022夏」のトークイベントに出演し、「ウルトラQ」江戸川由利子役、「ウルトラマン」フジ・アキコ隊員役の秘話を語った。今月発売された「桜井浩子写真集 act ULTRA」(復刊ドットコム)のサイン会も行われた。

 フジ隊員が使用したヘルメットを抱き、ステージに登場した桜井。「ものすごく重たくて、全員肩がこっていましたね」と笑った。ワンフェス実行委員会代表で、海洋堂の宮脇修一専務とのトークショーを展開。1966年1月から半年間、TBS系で放送された「ウルトラQ」出演の経緯を語った。

 「東宝映画株式会社撮影所というところの専属女優だったんですけど、所長からオーディションに行ってらっしゃい、と言われて、東宝の映画かと思ったら、なんか違うみたいで、窓もない狭い部屋で、知らないお兄さんからいくつ、お名前は、とか聞かれて、何だよこれはと思ったら、それがオーディションだったんです。二回呼ばれた時に、所長から円谷さんのところに行っといでと言われて、それで『ウルトラQ』の江戸川由利子という役になりました」

 演技テストは一切なく、年齢と名前と健康状態など他愛もない質問ばかり。その後、他の女優も同じオーディションに参加していたことを知った。

 「円谷一さんに『何で私が受かったの』と聞いたら、『君はスッピンでジーパンを履いてきたからね』と言われて、ええ~って。私は知らないで行ったんですけど、オーディションだからキレイにしていたとても、しょうがないじゃないですか」

 撮影時は怪獣と直接は絡まず、編集が駆使され物語が進行。怪獣と一緒に撮影した記憶は「ウルトラQ」ではなく、アフレコ時に時折目に入る程度だったという。「ウルトラマン」ではピグモンを相手に初めて怪獣と〝共演〟を果たし「楽しかったですね」と当時を振り返った。「ウルトラQ」アフレコを振り返った。

 「アフレコでナメゴンを初めて見てびっくりしました。ヌメヌメして気持ち悪いと円谷監督に話したら『そうだろ、そういうふうに作ったから』と言われました。演技の時は写真もなく、ナメクジのオバケと言われただけで、佐原(健二)さんと西條(康彦)さんと三人で想像するんですよ。撮影に追われて、皆でどんなものかと話す暇もない。それぞれが持つイメージは違っていたと思います。放送を見る時間もない。円谷英二監督は試写室に行っていたみたいですけど、私たちは次の撮影が続いて、放送も見ていなかったです」

 「ウルトラQ」の撮影が3分の2程度進んだとき、次作品でもヒロインに起用することを円谷一監督から「次もロコ(桜井の愛称)でやるよ。次はカラーなんだよ」と伝えられた。「ウルトラQ」の大成功を引き継ぐ形で「ウルトラマン」は66年7月に放送が始まった。放送決定とともに雑誌で特集を組まれるなど話題を集めた。第1話放送前には杉並公会堂で〝前夜祭〟と銘打たれた公開放送が行われた。

 「出ましたが、ステージがぐちゃぐちゃになりました。科特隊は前半に登場する予定で奈落に待機していたのですが呼ばれず、もうずっと呼ばれず、キャップ(ムラマツ隊長=小林昭二)が怒って『オレたちは呼ばれなかったら、ずっとここで待機か。そんなバカな。出よう‼』と、皆で舞台に上がりました。大変なことになってしまいました」

 「ウルトラQ」「ウルトラマン」それぞれ思い出深いシーンを振り返った。

「『ウルトラQ』では『マンモスフラワー』(第1話)のファーストカットがお堀端であり、レギュラー3人が出ましたが、何もないところに『怪しげなものが浮かんでますから驚いてください』と言われて、養成所で習わなかった、と思っていたら、佐原さんと西条さんはちゃんと見て驚いている。どうしたらいいんだろうと思い、怪しいげなものを想像して、驚いてみようとしたのがファーストカット。自分にとっての特撮入門でしたね。『ウルトラマン』はジャミラの台本をいただいたとき、私はいい番組に出ているなと初めて思いました。ジャミラはかわいそうですよね」

 今年公開された映画「シン・ウルトラマン」(樋口真嗣監督)では、長澤まさみ演じる浅見弘子の巨大化が話題になった。「ウルトラマン」でもフジ・アキコ隊員がメフィラス星人により巨大化を果たしている。

 「ビックリしました。樋口監督にちらっと聞いていましたが、まさか本当にやるとは思わなかった。場所も同じ丸の内の北口でこだわっていましたね。映画はオマージュだらけで懐かしくて、M78星雲に行かれてしまった円谷英二監督たちの顔が浮かんで泣きそうになりましたよ」。元祖巨大化シーンでも、建物を破壊したフジ隊員。「痛いですよ。ミニチュアがよくできていて、割り箸みたいなものでできていると思ったら全然違った。軸がしっかりして、たたいても壊れませんでした」と笑った。

 イベント後は「桜井浩子写真集 act ULTRA」の購買者を対象にサイン会を実施。「ウルトラQ」、「ウルトラマン」のヒロイン姿をはじめ、東宝ニューフェイス時代、出演した東宝映画のスチール写真、雑誌モデルとして活躍した少女期のカットなど、1950~60年代の撮影にフォーカスした写真集。各写真についての桜井本人によるコメントや、新規インタビューを掲載した。

 桜井は「私が一番ビックリしております」と写真集発売に感謝を示した上で「改めて見直して、当時のことを真っ先に思い出しました。時代背景とか、お世話になった人、皆の顔が浮かんできますよね」と語った。印象に残っているのは番組開始前に撮影した出演者、スタッフ、怪獣との記念写真という。

 「『ウルトラQ』と『ウルトラマン』で円谷英二監督の表情が全然違うんですよ。『ウルトラQ』の時は成功するか分からない時でしたが、『ウルトラマン』ではもう本当に機嫌が良かったですから。ウルトラマンが成功して円谷プロダクションが潰れなくてよかったな」

 桜井は昨年1月にユーチューブチャンネル「RocoTalk」を本格始動させ、ウルトラマンシリーズに関わる俳優、作家らとのトーク番組を配信中。バルタン星人の生みの親・飯島敏宏、ウルトラマンのスーツアクター・古谷敏、「ウルトラQ」で共演した西條康彦、「ウルトラセブン」の森次晃嗣らが出演している。また、小学館から8月に自伝「桜道 『ウルトラマン』フジアキコからコーディネーターへ」を上梓する。

 「自分から発信しといた方がいい。もう消えてもおかしくない世代なので。レジェンドの皆さんがコロナの間に次々とあちらの世界に行かれてしまいました。次は君だよって言われちゃったのかなと思って、老骨にムチ打って頑張っています。後世に残すためにね。私の次は、つるの剛士くんが頑張ってくれるかな」。

 行動力豊かな76歳は「写真集はこんな若い頃があったねと笑顔で、『桜道』は涙を流しながら書きました」と語った。「昭和、ウルトラの初期の時代を見てほしい。江戸川由利子役、フジ・アキコというツールを元に、時代背景を見てほしい」と写真集をアピールした。

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