宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘で知られる山口県下関市の巌流島。プロレスラーだったアントニオ猪木氏と故マサ斎藤さんが1987年(昭和62)10月4日、時間無制限、ノーレフェリー、無観客で2時間5分14秒にも及ぶプロレス死闘を行った場所としても有名だ。
昭和のプロレスファンには剣豪の決戦地以上に、ノスタルジーを感じさせる周囲約1・6キロの小さな島。そんな巌流島でプロレスのリングに立つことができ、猪木氏、マサ斎藤さんになりきって動画撮影ができる「巌流島 伝説のプロレス なりきり撮影ツアー」を、地元の観光支援団体が企画。4月から募集を開始した。
巌流島に本物のプロレスリングを設営。映画監督やメーク、衣装スタッフも同行し、オリジナルの〝巌流島決戦〟を動画作品として提供してもらえる2泊3日のプランだ。宿泊と、関門地域と呼ばれる下関・門司(福岡県北九州市)のS級グルメツアーがつき、大人2名1組300万円(税別=1人参加でも同額)と高額だが、すでに数件問い合わせが入っている。
関門地域で観光に携わるメンバーで構成された一般社団法人・海峡都市関門DMOが企画した。北九州市で飲食業を営むメンバーの厳洞秀樹さん(48)は、猪木氏とマサ斎藤さんの巌流島決戦に心を躍らせた世代。コロナ禍で巌流島に来島する観光客が減り、高付加価値のツアーを作りたかったという。
厳洞さんは「完全に猪木VSマサ斎藤のオマージュです。妄想が構想に変わりました。ニッチでマニアックなことで、お金を落としてもらえれば。僕らの世代なら、十分に意図が届いていると思う」と、プロレスファンの心をくすぐる。企業CMやYouTuber向けに、ロケ地としての巌流島の魅力をPRする狙いもある。
猪木氏とマサ斎藤さんの試合は、日本マット界史上初となるヘリコプター3機からの空撮が行われた。「なりきり撮影ツアー」では、オプションでヘリからの空撮も準備される徹底ぶりだ。電気、水道、ガスがない巌流島から、下関への最終渡船は午後4時ごろ。「猪木VSマサ斎藤戦ではかがり火が焚かれましたが、それはハードルが高そうですね」と笑う厳洞さんだが、最大限ファンのロマンに応えるつもりだ。