「今の仕事は自分に向いているのか」「職場環境と水が合わない」「人間関係が辛い……」など、どれほど社会が変化しても、決して尽きることがない仕事の悩みや不満。勤め人なら誰もが抱える、こうした想いに焦点を当て、ときには切なく、またあるときはユーモアたっぷりに、胸に突き刺さるような作品として描かれた4コマ漫画がある。大型のオフィスビルなどの設計を手掛ける建築士であり、有名漫画誌での連載や各種漫画賞を受賞したプロの漫画家でもある座二郎さんがSNSにて発表している『ヤメル★サラリーマン!ギリギリ君』だ。今回はその作品から選りすぐりのエピソードと共に、座二郎さんのインタビューもお届けする。
何か良い方向に進むための手立てだった4コマ漫画
座二郎さんが、漫画の創作をはじめたのは何と通勤電車の中。きっかけは、自身で配信していたインターネットラジオの企画だったという。「当時は、iPadもなかったので、消しゴム付きのシャープペンシルを使って電車の中でできる作業をやって、あとは家に帰ってから、という感じで描いていました」。このとき描いた約40ページもの作品を、雑誌『モーニング』の公募に送ったところ、いきなり入選。その後、『ビッグコミックスピリッツ』でのWeb連載をはじめ、各種漫画賞を獲得しながらプロの漫画家となっていく。
座二郎さんが描き出す漫画やイラストは、色彩や構図、物体の描写にいたるそのどれもが独創的。細部まで緻密に書き込まれたシーンがあるかと思えば、絵筆で書かれたような曖昧な線もある。作家性が際立つその特徴について座二郎さんは、現代美術家の大竹伸朗や新国立競技場のデザインを担当したことでも知られる建築家のザハ・ハディドの影響をあげている。「漫画以外のアートや空間表現を漫画の領域に持ち込むことで面白さが生まれると思っています」。
一方、今回紹介する4コマ漫画『ヤメル★サラリーマン!ギリギリ君』は、その画風とはガラリと印象が異なる。その理由には、2つの変化があったからだと話す。「ひとつは最近、iPadで絵を描くようになったこと。そしてもうひとつが、初めて4コマ漫画を描くにあたり、色々な画風を試そうと考えました。できるだけシンプルな線で時間を短縮しつつ素敵な絵にしたいとも思っています」。
この作品には、勤め人なら共感せずにはいられない、「仕事をやめたい」と思ってしまう、もしくは、思っている人の心の奥を突くようなエピソードにあふれている。
「会社員時代に嫌な思いをたくさんしてきたので、何か良い方向に昇華できないかという思いでこの漫画を描き始めました。もっとシンプルに描けばよかったのですが、ついつい絵の面白さみたいなものに走ってしまったのですが、私はそれを気に入っていますね。あと、『ゲツヨウビくん』というみんなが嫌いな月曜日を実体化したのは私が初めてじゃないですか?調べてないから自信はないですが……(笑)」。
ある人にとっては、もうひと踏ん張りするための支えとして。また、ある人にとっては新たな道に進むためのきっかけとして。読む人の心境によって、与える印象が大きく異なるこの作品。次は、どのような漫画で私たちの気持ちを揺すぶってくれるのだろう。期待せずにはいられない。
■■座二郎さんのWeb情報
▼note / https://note.com/zajirogh/
▼Twitter / https://twitter.com/zajirogh?s=20
▼HP / https://zajirogh.wixsite.com/zajirogh