東京五輪で海外選手らにコンビニが好評だった理由 人気商品は日本の「レジェンド」だった

北村 泰介 北村 泰介
写真はイメージです(chachamal /stock.adobe.com)
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 コロナ禍の中で無観客開催となった東京五輪だが、海外メディアや一部の選手らが日本のコンビニエンスストア(以下、コンビニ)や安価でクオリティーの高い菓子などの商品をSNSで紹介するという現象が起きている。日本のコンビニは世界の中でどのような存在で、その違いや注目される点は何か。流通アナリストの渡辺広明氏に見解を聞いた。

 コンビニといえば、日本は米国の後発だったが、欧米の先進国が驚く進化を遂げたことで知られる。品揃えの豊富さ、店員のサービス、店内の明るさやレイアウト等、日本のコンビニが評価される特徴や進化の背景を専門家はどう捉えているのだろうか。

 渡辺氏は「前提として、日本のコンビニはリアル小売業として世界最高峰です。日本でコンビニが登場したのは1974年頃ですが、日本のお客様の欲望を店頭で実現して世界でも類のない進化をしてきた」と指摘。その上で「基本的には、24時間営業、全国で店舗を展開し、1店舗に3000-3500商品の品揃えがある。おいしい中食(※外で調理された食品を購入して持ち帰って食べる形態)があり、その弁当などは専用の工場で作られている。日本が海外からきた車や家電などを、その顧客ニーズをくみ取って世界で勝負できる商品に進化させたのと同様、コンビニは海外でもその完成度の高さが新鮮に見られているのだと思います」と解説した。

 五輪開催中、海外メディアの記者や選手らがツイッターで絶賛した商品として、森永製菓の「チョコモナカジャンボ」や明治の「たけのこの里」が挙げられる。前者は72年に「チョコモナカ」として販売を開始し、アイスの中心にチョコレートが挟まれるようになった96年から現在の名称となった。たけのこ型クッキーの頭をチョコレートが覆うスナック菓子「たけのこの里」は79年から製造・販売と、いずれもロングセラー商品だ。

 渡辺氏は「1店舗3000以上の商品のうち、毎週、新商品が100品ほど出てきて、1年間で売場にある全商品の約7割が入れ替わる。その過酷なコンビニの売り場で生き延び、年に数品生まれる『レジェンド』の商品となったのが、『チョコモナカジャンボ』や『たけのこの里』です」と、今回の人気の背景を説明した。 

 その延長線上として、同氏は「過酷な環境を生き延びた菓子やカップラーメンなど、世界に向けた日本発の商品の中でも、今後は『食べ物』がキーになります。例えば、パッケージを順番に剥がして、のりで包む『バリバリのおにぎり』は昔ながらの日本のおにぎりではなく、コンビニ顧客用に開発され、生き残った進化商品。そういった独自の商品が注目されていくでしょう」と付け加えた。

 ただ、取材で来日したメディア関係者、出場した選手やスタッフは、あくまで五輪開催期間内の日本滞在。渡辺氏は「公共料金の支払い、チケット購入、住民票など行政サービスの発行、ATMといった日本のコンビニの本当のすごさは、短期の滞在では分からない。今回は中食、アイス、お菓子がフィーチャーされましたが、もう半年滞在したら、そういったすごさや、さらに知られていないおいしいものも発信されたでしょう」と指摘した。

 五輪は8日に閉幕する。渡辺氏は「記者は活動できるエリア限定の中でコンビニを利用し、その範囲内で発信していた。それによって日本のコンビニのすごさが伝わったとも思うが、もし、コロナ禍がなければ、五輪の観光客も利用していただろうし、外食文化もすごい東京というグルメシティの実際も伝えられたんじゃないか思う」と総括する。

 原則的に、選手村と試合会場、メディア関係者らの宿泊先と会場や五輪プレスセンターの往復だけで、「寄り道」は許されなかったはずの今大会において、ルールを守った多くの人たちにとって、つかの間の楽しみである「オアシス」になった日本のコンビニ。数多い競技から「レジェンド」が生まれたが、選手だけでなく、食品でも注目されたのは、コンビニで過酷な競争原理を生き延びた「レジェンド商品」だった。

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