日本で働くベトナム人女性を描く『海辺の彼女たち』監督とプロデューサーが語る

山本 鋼平 山本 鋼平
『海辺の彼女たち』の藤元明緒監督(右)と渡邉一孝プロデューサー
『海辺の彼女たち』の藤元明緒監督(右)と渡邉一孝プロデューサー

 映画『海辺の彼女たち』(5月1日公開)の藤元明緒監督と、プロデューサーの渡邉一孝氏が20日、都内の外国特派員協会で記者会見を行い、作品に込めた思いや舞台裏などを語った。

 ―ベトナムから来た3人の女性は、技能実習生として3カ月従事した過酷な職場から脱走を図り、雪深い港町にたどり着いた。不法就労という状況に怯えながらも、故郷にいる家族のため、幸せな未来のために懸命に働き始めたが…。より良い生活を求めて来日したベトナム人女性たちを主人公に、きらめく未来を夢見ながら、過酷な現実と闘う姿を描く―

 在日ミャンマー人の移民問題と家族の愛を描いた初監督作品『僕の帰る場所』に続いて、移民問題が題材になった。藤元監督は「ミャンマーの人と結婚していなかったら、こういった作品を撮っていなかったと思います」と個人的な背景を語った。前作の撮影後に結婚し、日本で暮らす外国人が抱く生きづらさに触れる中で、今作を着想したという。「僕は身近な生活、家族や知人や友人から映画にすべきものを感じます。半径5メートル以内を描くと小さな映画が生まれるという批判を聞くのですが、僕はそれが気持ちのいい映画作りだと思っています」と続けた。

 3人の女性はベトナム現地でのオーディションで選出。その後3人を取材し、彼女たちの人生を脚本に反映させた。役名を本名と同じにした。「彼女たち自身が〝自分の人生で、このようなことがあったかもしれない〟という意識持ってもらうため、本名の役で出演してもらいました」と説明した。ある重要なシーンでは、脚本をもとに3人で議論を深め、脚本にはなかった成果が生まれたという。実際にあった出来事が素材なだけに、ドキュメンタリータッチの映像が続く。劇中を彩る音楽は皆無。藤元監督は「脚本から音楽はなしと決めていました。(鑑賞者に)彼女たちと一緒に行動しているような気持ちになってほしくて、彼女たちの耳に入る音以外は流したくなかった」と語った。

 『僕の帰る場所』の主要スタッフが継続参加し、好評だった前作で培った人脈を生かし、ロケ地の青森県外ヶ浜町の支援にも恵まれた。さまざまな好要素に導かれた今作。プロデューサーの渡邉氏は「日頃から監督とはインディペンデントとして、僕たちでないとつくれないものを作るべき、大きい会社がやろうとしていることと違うことをするべき、と話しています。自分たち自身を説明することで各方面に仲間ができ、この映画ができたと思います」と振り返った。

 今作は国際的な若手の登竜門として知られる第68回サンセバスチャン国際映画祭の新人監督部門に選出された。ポレポレ東中野ほか全国で順次公開される。

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