転職活動の成否を分ける鍵のひとつに「職務経歴書」がある。しかし多くの転職希望者がその重要性を理解しつつも、出来上がるのは「〇〇年、〇〇部に入社」「××業務を担当」といった、単なる事実の羅列だ。それは採用担当者の心を動かす自己PR資料ではなく、退屈な「業務年表」に他ならない。
では、どうすれば退屈な年表を採用担当者に読まれる「物語」へと昇華させられるのだろうか。キャリアカウンセラーの七野綾音さんに話を聞いた。
ー「残念な職務経歴書」の典型例とはどのようなものでしょうか
最も残念なのは、まさに業務年表になっているものです。いつ、どこで、何をしたかという事実が淡々と並ぶだけで、人物像や仕事へのスタンスが全く見えてこない。読んでいても興味がそそられず、記憶に残りにくい書類です。
ー年表から脱却し、効果的な自己PR資料にするにはどうしたらいいのでしょうか
鍵は「あなたの職業人生を、読み手がイメージできる物語にすること」です。
事実の羅列ではなく、その背景にある文脈を語ることが重要です。例えば、ある業務を担当したという事実に対して、「どんな課題があったのか」「どんな工夫や努力をしたのか」「どんな成果につながったのか」を具体的に書きます。
特にキャリアの節目ごとに「なぜその決断をしたのか」という理由を明記することで、キャリアの一貫性や価値観が伝わり、単なる年表が深みのあるストーリーへと変わります。
ー採用担当者の心を掴むためには、どのような内容を盛り込むべきですか
職務経歴書は、あなたの仕事人生を伝えるプレゼン資料です。「こう書かなければいけない」という固定観念を捨て、自分の過去・現在・未来を丁寧に言語化して書類に表現することが大切です。
例えば、職務要約は読み手の興味を引く最初の取っ掛かりです。単なる経歴の要約ではもったいないので、自分のキャリアのテーマ宣言のようにしましょう。「これまで〇〇という強みを活かし、△△を実現してきました。」という一文で自分を定義します。
その上で志望動機では、なぜその会社で実現したいのか、どう実現するのかを。自己PR欄では、数字で示せる実績だけでなく、「強みをどう活かして組織に貢献したのか」というプロセスを描くことで、人柄や仕事への姿勢が伝わります。
ー職務経歴書は、応募する企業ごとに内容を変えるべきですか
経歴という事実部分は変えられませんが、自己PRや志望動機は応募先によって変えるべきです。
例えば、事務職と営業職、両方の経験がある場合、事務職に応募するなら「正確な処理力」や「業務改善スキル」を、営業職に応募するなら「顧客との関係構築力」や「提案力」を、というようにその職種に親和性のある強みを強調します。
自分の複数のスキルの中から、応募先が求める人物像に最も合う要素を選び、そのエピソードを厚めに書く。そうすることで、「まさに求めていた人材だ」と思わせる魅力的な職務経歴書になるでしょう。
◆七野綾音(しちのあやね)キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント
やりがいを実感しながら自分らしく働く大人を増やして、「大人って楽しそう!働くのって面白そう!」と子ども達が思える社会を目指すキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント。