可愛い子どもを思うあまり、「これで好きなものを買いなさい」と言って家族カードを渡した経験のある方もいるだろう。後で精算する約束だったとしても、その返済が曖昧なまま、子どもが高額な買い物を繰り返していたらどうなるのだろうか。
ブランド品の購入、友人との海外旅行、エステ費用など、年間数百万円にも及ぶ支払いが親のカードでおこなわれた場合、「贈与」とみなされ、思わぬ高額の「贈与税」が課せられる可能性がある。親子の間でのクレジットカード利用に潜む税務上のリスクについて、正木税理士事務所の正木由紀さんに話を聞いた。
ー親子間のカード利用がなぜ「贈与」になるのでしょうか
法的に贈与が成立するのは、当事者の一方が「財産を無償で与える意思」を示し、相手方がそれを受諾した時です。クレジットカードのケースでは、親が「カードを使っていいよ」と許可することが「与える意思表示」、子どもが実際に買い物をして、経済的利益を受けることが「受諾」に当たると考えます。
つまり、商品やサービスそのものではなく、それを購入するためのお金を親が子に渡しているのと同じ構図といえるでしょう。
ー「立て替え」と「贈与」はどこで分けられるのでしょうか
「立て替え」と「贈与」を法的に分ける最も重要な点は、「返済の事実と実態」です。一時的な立て替え払いであり、後日速やかに精算が行われているのであれば、それは贈与にはあたりません。しかし、返済が長期間行われなかったり、返済の約束自体が口約束のみで曖昧だったりすると、実質的な贈与であったと認定される可能性が高くなってしまいます。
「立て替えた」と主張するためには、親子間であっても借用書を作成し、返済期日や利息を定め、実際にその通りに返済している記録を残しておくことが、後々のトラブルを避ける上で大切です。
ーブランド品や旅行費用は生活費とはみなされないのでしょうか
「生活や教育に必要な範囲の金銭援助は非課税」とされているものの、ブランド品の購入費用や、友人との海外旅行、エステといった娯楽費は、社会通念上、生活に最低限必要な費用とは認められません。
仮に、生活費として渡したお金であっても、子どもがそれを貯金したり、株式や不動産の購入に充てたりした場合も同様に贈与税の課税対象となり得るため、注意が必要です。
ー申告が漏れていた場合のペナルティはどうなりますか
年間110万円の基礎控除額を超える贈与があったと認定され、申告が漏れていた場合、本来納めるべき贈与税に加えて、重いペナルティが課せられます。
申告期限内に申告しなかったことに対するペナルティとしての無申告加算税、納税が遅れたことに対する延滞税が代表例です。また、悪質と判断された場合には重加算税が課せられる場合もあり得ます。
贈与税の支払いは、子ども側が支払わなければならないため注意が必要です。「親子間のことだから」と安易に考えず、親子ともに理解しておきましょう。
◆正木由紀(まさき・ゆき)/税理士 10年以上の税理士事務所勤務を経て令和5年1月に独立。これまで数多くの法人・個人の税務を担当。現在は、社労士や司法書士ともチームを組み、「クライアントの生活をより充実したものに」をモットーに活動している。私生活では2児の母として子育てに奮闘中。