あと1カ月で、ひな祭り。えっ!ひな祭りは3月3日じゃないの?と、思う人も多いはず。だが9月9日の「重用の節句」(菊の節句)は、「後(のち)の雛」「秋の雛」とも言われ、江戸時代にはおひな様を飾り、健康や長寿などを祝う風習があった。娘のために祝う「桃の節句」ではなく、自分や母のためのひな祭りが「後の雛」となる。
飾り始める時期は特に決まっていないが、せっかく家族が集まる機会の多いお盆を利用するのもひとつ。桃の節句からは半年後に当たるため、大切な人形の虫干しを兼ねていることも多い。特に8月は梅雨の湿気を取り除くことができるため、虫干しの観点からも推奨されている。
その一方で、以前持っていたひな人形は処分してしまったり、自分用を持っていなかった人が、新たに購入して飾ることも。そのため「大人の雛祭り」とも呼ばれることもある。
神戸の人形店、人形補 福順号でも、年に何件か「後の雛」のために新たにひな人形を購入する人がいるという。「数は多くないのですが、年に何件か購入されます。節句行事ですので『後の雛』が広がれば」という。購入者は昨今の世情から、ネット購入が多いため、はっきりとした年齢はわからないが、「60~80代の方ではないでしょうか」と推定している。
購入される人形は親王飾り。桃の節句のような華やかなものではなく、十二単などの衣装も「シックなデザインのものが好まれる」という。コンパクトで出し入れしやすいのもポイントだ。飾り付けは「菊の節句」を意識し。菊の意匠を取り入れたり、人形とともに菊の花をあしらったりすれば、雰囲気も高まる。
また福岡県朝倉市の秋月城跡では、2016年の9月9日から長屋門の石段を利用して、約600体の雛人形を飾った「後の雛」が行われている。元々は同年の2~3月に「古都秋月雛めぐり」が行われ、石段に約250体の雛人形を飾ったことがきっかけ。その雛人形の管理のため、虫干しを兼ねたイベントを何かできないかと関係者が調べていたところ、重陽の節句に「後の雛」という行事があることを知り、以来毎年、9月9日に「後の雛」を開催している。現在では人気のイベントとなり、人形も当初の250体から600体にまで増えている。今年も9月9日に開催を予定。年々口コミで広がり、多くの観光客が訪れているという。
1カ月後の「後の雛」。押し入れの奥深く眠ったままになったひな人形を取り出すもよし、あらたに自分だけのものを購入するのも楽しそうだ。