”式典のリボン”手作りできるのは日本に数社のみ 職人不足、アクセサリー化で奮闘

 入学式や政治家のパーティーなどで胸元を飾る「リボン徽章」を製造する渡辺徽章(大阪府松原市)は、数少ない手作りのリボン徽章メーカーとして、技術継承者の不足に悩む。”絶滅”を回避するためアクセサリーブランド「EMBLOOM」を立ち上げ、徽章の製法を使った襟飾りで注目を集めている。

 同社はバラの花を表現した「リボンバラ」など、主に式典で使われるリボン飾りを製造する老舗メーカー。「リボン徽章は手作業でしかできない」と、本物の花らしい雰囲気を出すため全て職人の手作業で作ってきた。花びらはリボンに指でふくらみを持たせながら1枚ずつ手縫いし、ベテラン職人がパーツを立体的に組み上げる。

 「日本の行事には欠かせないものだったんですが、伝統工芸品でも地場産業でもない。技術を継承していくことが難しい」。渡邉千佳子社長は後継者の不足に危機感を抱く。同社では現在、7人の職人が徽章作りを担当し、そのうち最高齢は「78、79歳」。約40年前は全国に5、6社あったという徽章メーカーだが今は「日本で3社しかないです」と、職人不足で業界全体が縮小傾向にあるという。

 渡邉社長は「職人も高齢化してきている。新しいことをして少しでも若い人に興味を持っていただいて、何か一緒にできることがあれば」と認知拡大を目指し、アクセサリーブランド「EMBLOOM」を2017年にスタートした。徽章と同じリボンの折り方で直径約3・5センチの小さな花を作り、スーツの襟元を飾るアクセサリーに仕立て上げた。ジャケットの襟元の穴を飾る「ラペルビン」と呼ばれるアクセサリーが中心で、徽章と同様に職人が手作業で作っている。

 スーツやフォーマルなジャケットを着る機会が多い男性の購入を見込んでいたが、「購入者の8割が女性」。バレンタインデーや父の日のプレゼント用に買われるという。渡邉社長はコロナ禍でジャケットの着用機会が減ったことに触れ、「生活様式も変わったので、EMBLOOMも変化していかないといけない」と次の変革の構想をふくらませていた。

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